今回は巷で話題になっているサステナビリティ基準を題材とする。
ISSBが2023年6月にIFRS S1号、S2号を公表した。
S1号…サステナビリティ関連開示の全般的要求事項
S2号…気候関連開示
今回通読したのは、SSBJ のWEBサイトに掲載されているIFRS 12,S2のまとめ資料である。
*産業別ガイダンスは未読。
【略称のおさらい】
ISSB(International Sustainability Standards Board)
…国際サステナビリティ基準審議会
SSBJ(Sustainability Standards Board of Japan)
…日本サステナビリティ基準委員会
SASB(Sustainability Accounting Standards Board)
…米国サステナビリティ会計基準審議会/米国
【1番強調したいこと】
S1号、S2号は、2024年1月1日以後開始する事業年度から適用とのことだが、
重要なのは、各国(正確には各法域)が自国の適用時期を決めるということ。
我が国、日本の開示制度におけるIFRSサステナビリティ開示基準の取扱いは、本資料作成時点では何も定まっていない。
日本において、IFRS会計基準(指定国際会計基準)を採用している企業ですら定まっていない。
【S1号、S2号は、他の基準や提言等を参照しながら作られた】
TCFD(気候関連財務開示タスクフォース)提言を基礎としている。
SASBスタンダードを基礎とした産業別ガイダンスは、参照して適用可能性を考慮することが要求されている。
GHG排出(温室効果ガス排出)の算定に当たっては、原則としてGHGプロトコル(温室効果ガスプロトコルの企業算定及び報告基準)を用いることが要求される
S2号の産業別ガイダンスは、基準の一部を構成しないものと位置付けられた。そのため、追加的な要求事項を記載したものではなく、適用可能性を考慮した結果として開示されることはある。
【S1号、S2号の主な特徴】
報告のタイミング
財務諸表と同時に報告
報告期間
財務諸表と同じ期間(年度開示のみ)
重要性
企業の見通しに影響を与えることが合理的に見込まれるサステナビリティ関連のリスク及び機会に関して重要性がある情報を開示
S1号の主な開示
コアコンテンツである4区分を開示
- ガバナンス
- 戦略
- リスク管理
- 指標および目標
S2号における開示指標、および算定方法
GHG排出(温室効果ガス排出)はスコープ1、2の他、スコープ3についても開示の対象となる。
算定に当たってはGHGプロトコルを用いることが要求される。
S2号の主な開示 ~気候変動に関するコアコンテンツである4区分を開示~
- ガバナンス
- 戦略 *気候レジリエンス評価として、気候関連のシナリオ分析を実施する場面。手間とコストがヤバそう
- リスク管理
- 指標および目標
概念的基礎の4つ
- 適正な表示
- 重要性
- 報告企業
- つながりのある情報
産業横断的指標カテゴリーに関連する情報の開示
- スコープ1、2、3の温室効果ガス(GHG)排出 *スコープ2はロケーション基準により開示
- 移行リスク
- 物理的リスク
- 機会
- 資本投下
- 内部炭素価格
- 報酬
報告日時点で企業が過大なコストや労力をかけずに利用可能な、全ての合理的で裏付け可能な情報を用いる。
→会社担当者への配慮が感じられる。
サステナビリティ関連財務開示は、一般目的財務報告書の一部として提供する。2要件を満たせば情報を相互参照によう含めることができる。
比較情報が必要。新たな情報を識別した結果、過年度に見積もられた数値に影響を与える場合、比較情報の数値を見直した上で開示し、見直した理由、見直し前との差異額を開示する
→会計上は、会計上の見積りの変更であれば将来にわたって影響を反映させていく一方、サステナビリティ関連財務開示は遡及しないといけないのか。きっつ。
適用初年度は、様々な経過措置が設けられている(例えば、比較情報の開示は要求されないことや、スコープ3のGHG排出開示が要求されない)。
奥が深そうである。
それではまた