2022.5.28. #14.5関連のことを追加しました
2022.8.6. #29で書いた誤表記を修正しました
どうもこんにちは。
5/19に初めて1日のアクセス数が100を超えました。ありがとうございます!
Inscryptionファンとしてやらねばならぬと思って自撮りしました。
ユニークアクセスの約85%はサーチエンジン経由なので、1日10数件のこともあれば数十件を超えることもあって、バラつきがすごいです。
さて、Inscryptionストーリー考察ということで、今回は前後編に分けた後編になります。
ネタバレ注意!
考察記事もくじ
表記について
目次
▶︎さあ、あがめよ
▶︎未知なる画像……?
▶︎性悪説と性善説
前回#13は骨の王のモチーフになった可能性のある神や悪魔について検討しました。
今回は、実際「Inscryption」の骨の王がどのような立場をとっているかを考えます。
さあ、あがめよ
発言内容を整理すると、骨の王はOLD_DATAの内容はもとより、OLD_DATAの持つ力に関心があるようです。
Act2では”You may not understand its meaning. Not even I do fully. But you appreciate its power.”(日本語版:お前にはその意味が理解できないであろう。私ですらすべてを理解しきれていない。だがお前はその力の真価を知っているだろう。)と言いますが、
挑戦者(プレイヤー)は、OLD_DATAの中身については理解できないかもしれなくても、その力の真価は分かっている。
だから私をあがめるつもりになったのだろう? という意味だと受け取れます。
その前、「あがめるつもりになるまで近づくでない」という原文は、
”Do not approach me again unless you will worship me. Worship it.”となっています。
ここで難しいのが最後のitの扱いです。
meの言い換えには流石にならないだろうということで※、
文脈的にit=OLD_DATAと考えて逐語訳すると、
「私を崇めるつもりがない限り私に再び近づいてはならない。OLD_DATAを崇めよ。」
となり、
骨の王を崇めるということは、すなわちOLD_DATAを崇めることである、ということになります。
※ただ、最初に”You approach The Bone Lord. You approach me.”という言い方もしており、it = The Bone Lordとして、「骨の王という存在」を崇めよという意味にも取れなくはないかもしれません。
今回は、この2つの発言の間に2セリフ分と割と離れていてitで参照するのはやや難があることから、it = OLD_DATAとして話を進めます。
余談ながら、「お前は骨の王に近づく。骨の王とは私のことだ。」は名訳ですよね。好き。
未知なる画像……?
で、骨の王はそんなOLD_DATAの形容として、
「邪悪と腐敗をもたらす」「未知なる画像を作り出す」と言っています。
原文を確認すると、
“How it twists and corrupts. How it even invents images unknowable.”です。
twistとcorruptは自動詞で使われているので、
「邪悪と腐敗をもたらす」ではなく「邪悪で腐敗している」「ねじ曲がって邪悪である」くらいの意味でしょう。
意味が取りづらいのは「未知なる画像を作り出す」です。
”even”が使われているのは、OLD_DATA本体が邪悪であるという状態にあるだけでなく、
”invents images unknowable”と能動的に何かをしていることを指すと思われます。
ということで、
①images
②unknowable
の検討が必要です。
①images
OLD_DATAの力に言及する発言から考えると、
単にモノとしての画像ではなく、
概念としての画像→visionやconception の意だと推測します。
inventsは「発明する」の意で用いられるように、無から有を創り出すことを指す語です。
これらから、「悪魔」がスクライブの対立を煽った(Act3)ように、
OLD_DATAが意思を持って何かを達成しようとしていることを指して、visionの類語としてimageを使っているのではないかと考えます。
②unknowable
knowできない、でunknowableなわけですが、
・未知(今は知ることができない)と、
・不可知(今後も知ることができない)
のどちらで取るかが問題になります。
日本語版では未知の方で取っていますが、
「私でさえその(OLD_DATAの)意味を十分には理解できていない」という発言からすると、
不可知であるという方が適当ではないかと思います。
と、いうことでまとめると、
OLD_DATAは、それ自体がねじ曲がって邪悪であるのみならず、
②我々が知り得ない
①ビジョンをも創り出していて、
骨の王はそれについて考察をしている。
ということではないかと考察します。
性悪説と性善説
そもそもなぜ前編でモチーフの話をしたのかというと、Inscryptionのキャラクターは設定に基づいた性格や志向を引き継いでいるのではないかという考えが根底にあるからです。
過去の記事でいうと、#10においてレシーの「獣のスクライブ」「フォトグラファー」としての側面が、死のカードの作成にかかわっているのではないかという考察をしました。
今回、骨の王は悪魔(バフォメット)のようでもありますが、神(ハーデース)をモチーフにしている可能性もあります。
そのため、性悪説でも性善説でも考えられる……ということで、分けて考えます。
性悪説で考えるなら、
骨の王はわざと、OLD_DATAの力を知っているプレイヤー(ルーク)にOLD_DATAの知識を与え、
カーネフェルコードに到達するよう誘導していたのではないか。
理屈としてはP03がゲームプレイヤーの性を利用して「大いなる超越」を達成しようとしたものと同じです。
「知らずにはいられない」というプレイヤーの性を利用して、
「ゲームを3Dにし、キャラクターが自我をもって※争うことを可能にしたのは、”OLD_DATA”なるものの力によるものではないか?」
と「OLD_DATA」に興味を持たせた。
それから「私ですら十分には理解できていない」OLD_DATAの知見を与えることで、
「あるいは自分なら理解できるかもしれない」という気持ちにさせた。
さらにその記録を禁じることで「覚えているうちに本当かどうか確かめたい」と焦らせ、
最終的には終末装置を起動させるカーネフェルコードを暴かせようとしたのではないか?
……苦しい!
がんばって性悪説を書いてみたんですが、かなり苦しいですね。
※ゲームキャラクター自我問題については#8.5でThe Hexとの関わりに触れましたが、
その後自分なりに考えて「キャラクターの自我の表出はOLD_DATAによるものである」という考察に落ち着きました。
追ってThe Hexにおける「ゲーム」の扱いの特殊性に触れつつ記事にしたいと思います。
まず、Act2でオボル貨を捧げなければ骨の王に会えないのは元々のゲーム「Inscryption」の設定を引き継いでいるためだとしても、
ルーク・カーダーを誘導するためであれば、「Act2で入手した鍵を使わなければAct3で会えない」というのは到達できない可能性が高く無謀です。
それだったら、Act2でもAct3でも、どこかに鍵を置いておけばいいだけの話です。
隠しキャラクターとして設定されたからその原理に従っている、という擁護もできなくはないですが、かなり不自然です。
と、いうことで私個人としては性善説として、
「単にOLD_DATAを追究しているだけで、同じ志を持つルークに知識を与えただけ」という立場を取ります。
理由としては性悪説より自然だからですね。
Act2ですぐに教えるのではなく、Act3で使える鍵を渡して実際に到達できた時だけ知見を与えるのは、
それだけ知ることに真摯であることを示してほしかったのではないか、と思います。
また、記録を禁じた※ことについては、
自身(およびOLD_DATA)を崇める者にのみ、その知見を与えようとしたためではないかと考察します。
記録すれば、例えルーク自身がOLD_DATA追究のために用いるものだとしても他の者に知られる可能性がある。
※メタ的には、「結局OLD_DATAって何なの!?」とARGに持っていくための演出だろうなとは思います。
あるいは、ハーデースに関連づけてギリシャ神話の話にこじつけ結びつけるなら、
儀式を固く秘密にした「エレウシスの秘儀」や「オルペウス教」があります。
特に、エレウシスの秘儀(そのものはハーデースより妻ペルセポネーとその母デーメーテールに対する儀式だったようですが)において、
その守秘義務はとても強いものであったようです。
まとめると、
骨の王は純粋にOLD_DATAの力というものに関心があって、
邪悪であろうとも、OLD_DATAが何なのか・何をしようとしているのか追究していた。
そして同じ志を持つプレイヤーが、真に知りたいかを試すために鍵を与え、
その鍵を使って再び自分のもとに現れたルークに秘密を授けた、
というのが考察になります。
2022.5.28.追記
なお、木彫り師ARG(#14.5参照)内で、木彫り師は骨の王についていくつか質問を受けています。
が、基本的には答えははぐらかしています。
”Where is the bone lord?(骨の王はどこにいるのか?)”は2回質問されており、
それぞれ”Old. Evil.” “Old. Evil. Where? I do not know.”と回答しています。
「どこ」の回答にOldとEvilと答えている時点であまりまともに取り合ってくれてはいません(このタイプの回答の仕方はめちゃめちゃ多くて頭抱えます)。
このOldとEvilが居場所にかかっていると考えるか、後者の「どこにいるか? 知らないね」から骨の王本人について言っていると考えるか、
いずれにしても木彫り師は骨の王を邪悪だと考えていることが分かります。
一方で、“Does the Bone Lord serve the OLD_DATA, and if yes, why do they?(骨の王はOLD_DATAに仕えているのか、もしそうならなぜか?)(訳注:骨の王の性別は明かされていないので、代名詞はtheyで受けているようです)”には”Hmm.(うむむ。)”と言葉を濁しています。
明確に否定も肯定もせず、はぐらかすでもなく、ただ回答を避けています。
木彫り師はAct2でOLD_DATAのことを邪悪だと言っているため、
その力に魅入られている骨の王のことを邪悪な存在と捉えている、というのが私の見方になります。
◇
奇妙なちらつく鍵についても書こうとしたのですが、文字数が4,000字に迫っていたので今回はここまでで。
骨の王は、他の登場人物と関わらず(ソウヤーもオボル貨のことしか言及せず、人によってはAct1の頭骨でしか遭遇しない)関係性が不明なこと、セリフが少ないことから、
登場人物の中で一番何を考えているか分からないキャラクターだと感じます。
元々のゲームにおける骨の王を考察するにも本人が完全にOLD_DATAのことしか話さないので、論拠+理屈でなんとかする本考察ではどうしようもないかな……と思います。
単なるARG要員だと割り切る豪胆さが欲しい……!!
Act2で骨の王に会う手前で見られる、ヒトラーの遺骸めいた画像については今回触れることができなかったのですが、
一応「元々のゲーム」についての記事で引き合いに出す予定です。
それ以上の考察を行うかはまた考えます。
次回更新は素直に一回スキップして、5/28(土)予定です。
マグニフィカスの目玉の話については、一部原文の確認が必要な部分があったので、また回収出来次第ですね。
Act1は無心で熱中してプレイしちゃうので怖い。