沙織とイベントでお面を作る
ママ友達と一緒に出かけたイベントは、久しぶりに美香が穏やかに過ごせるひとときだった。心の中に重くのしかかる日々の疲れを、少しの間だけでも忘れられる時間。ワークショップで、みんなと一緒にお面を作る。
沙織は色鉛筆を手に取り、笑顔で個性的な色使いでお面に鮮やかな色を塗っていった。美香はそんな沙織の姿を見て、ふと嬉しくなり、少しだけ安堵を感じた。いつもの家の中とは違う、優しい空気がそこにあった。
お面で楽しそうに遊ぶ沙織
出来上がったお面を手に、沙織は他の子供たちと楽しそうに遊び回っていた。ママ友達の子供たちの笑い声、走り回る小さな足音、その風景を眺めながら、美香は静かに心を癒していた。
お面がなくなる
次の日、沙織が「お面どこ?」と聞いてきた。美香は、「テーブルの上に置いてたよね」と答え、家の中を見回す。沙織がせっかく楽しんで作ったお面、そんなに大事なものを無くすわけがない。
美香は焦る気持ちを抑えつつ、家中を探し始めた。クローゼットの中、リビングの隅、ソファの下……でも、どこにもない。
お面はゴミ箱に捨てられていた
最後にふとゴミ箱に目をやると、目に飛び込んできたのは、折り重なって無造作に捨てられた2つのお面。瞬間的に、頭の中で優一の顔が浮かんだ。
「まさか…」
怒りが込み上げてくる。沙織があんなに楽しそうに作ったものを、どうして捨てるんだ?美香の手は震え、胸の奥に抑えきれない感情が渦巻いた。冷たい何かが心の中に広がる。沙織に気づかれないように必死で怒りを抑えながら、優一に向かって低い声で話しかけた。
「このお面がゴミ箱に捨てられてたんだけど、優一が捨てたの?」
そんなのゴミみたいなもんだろう
優一はテレビを見ながら、無関心そうに顔を向けることもなく答えた。
「そんなの、ゴミみたいなもんだろう。」
「沙織が一生懸命作ったお面を勝手に捨てるなんて、非常識だよ。」
「人のものを勝手に捨てないで。」
美香の声は低く、震えていた。怒りが滲むその声に、優一はつまらなそうに肩をすくめて、いつものように反発してきた。
「うっせーな。お前、たいして稼いでないくせに、黙ってろよ。」
繰り返されるいつものパターン。美香の胸に重くのしかかる、絶望と虚しさ。何度このやり取りを繰り返してきただろうか。
日常の中で少しでも心安らぐ時間があれば、また明日も頑張れるはずなのに、家に戻るたびにその希望は優一によって打ち砕かれる。
もう、うんざりだ。
優一の声が遠く感じる。何度言われても、同じことが繰り返される。こんな日々がずっと続いていくのかもしれない――その現実を前にして、美香は心が折れそうだった。
途方に暮れながらも、美香は立ち上がった。そして、そっと沙織の部屋を覗き、無邪気に遊んでいる沙織を見つめる。沙織のために、何ができるのかを考えなければならない。