わたしが一人でその温泉郷を訪れたのは
一昨年のちょうど今ごろです。
日中はまだ夏の名残りの暑さが続いていて
温泉を楽しむには少し早すぎた感じでしが、
それでも山々は薄く色づきはじめ
空も秋の気配が漂っていて
夕暮れから夜には涼しく爽やかな風に
包まれていました。
独り旅は好きですが、
秋はやっぱり素敵な誰かと一緒に
旅をしたい気分です。
前もって予約しておくことがほとんどですが、
このときは急に思いたって出かけたので
お宿は現地に到着してから探しました。
温泉郷の入り口付近でタクシーを降りると
すぐに地元の観光案内所へ向い、
露天のお風呂があるお宿を希望したところ、
混みあった時期のため
あいにく一軒しか該当がない状況です。
一軒だけでも空き部屋があったのは幸運とおもい
すぐに連絡を入れてもらいました。
案内所でもらった地図を頼りに
細い坂道を10分ほど登った山の中腹に
そのお宿はありました。
あたりには風にのって湯けむりが舞っています。
素敵なところで心も弾みます。
ここは全室に源泉を引く露天風呂が付いていて、
たっぷりと温泉を楽しめそうです。
宿帳に名前や住所、連絡先などを記入しながら
お帳場の女性に説明を聞きます。
この女性、
愛想が悪いわけではありませんが、
話し方が事務的なのが少し気になります。
お部屋の説明を聞いたわたしは、おもわず
え?!
と、声をあげました。
部屋付きのお風呂が共同?。。ですか??
女性は相変わらず事務的に、
はい
と短く応えてから、さらに説明を続けます。
説明によると、
その部屋は、普段は二組のグループで利用できる
ようになっていて、それぞれお部屋は別々で
部屋付きの露天風呂を共有するスタイルに
なっているとのこと。
それぞれのお部屋から露天風呂へ出入りする扉には
部屋側から施錠できるようになっていて
一応プライベートは守られるらしいのですが。。。
ホテルによくあるコネクティングルームのイメージ?
でも、お風呂側からは施錠することができないため、
お互いに声をかけあって入浴するのだとか、、、
唯一この部屋だけが、このコネクティング形式?
なのだそうです。
もう一方の部屋にはすでに滞在者がいるらしく、
どうりで都合よく一部屋だけ空きがあったものだと、
一人で苦笑してしまいました。
ほかにお部屋は空いていないか、念のため
確かめようとも思いましたが、
案内所で聞いた話しのようすでは、
それも無理っぽい感じだったし、
このお帳場の女性からも
((お嫌なら やめときますか?)) 的な空気が
ジンワリと漂ってきているので
その確認はぜずに、
もう一方の部屋の宿泊客がカップルなのかどうか
だけ聞きました。
すると、
お一人様ですよ
と素っ気なく答えが返ってきました。
わたしのような女一人旅か、と少し安心しました。
もしもアツアツのカップルなんかだったら、
鍵がかかってたって、お風呂からイチャイチャと
楽しそうな声でも聞こえてこうようもんなら
たまったもんじゃありませんからねぇ。
とにかく、
お部屋から露天風呂へ出入りする扉には
鍵をかけておけばいいし、
お風呂は大浴場へ行って露天も楽しめばいいや、
と思うことにしました。
ところが、
お帳場の女性によると、大浴場は内風呂も露天も
源泉を引く設備の故障でしばらく利用できない状態
なのだそうです。
最悪ぅ、、、
と、いつまでもクヨクヨしてても仕方がないので、
さっさと気持ちを切りかえ、お部屋へ案内してもらいました。
お部屋は、シンプルながらも綺麗な和室で、
正面の窓からの景色も上々です。
そして問題のお風呂はというと。
木製の扉の向こう側からは、
かけ流されているお湯の音しか聞こえてきません。
もし、お隣さんが先に入っていたら悪いので
ノックして
小声で呼びかけてみましたが
なにも反応がありません。
ソロソロとゆっくり扉を開けてみると、
あらまぁ素敵!
大人が4人で入ってもゆったりできそうなサイズの
檜造りのお風呂です。
お隣さんはお出かけ中かしら?
夕暮れのいい時間にもなってきていたので、
お食事の前にひとっ風呂いだだくことにしました。
早速わたしはお部屋のほうで素っ裸になり
タオルも持たずに
露天風呂に呑みこまれるように浸かりました。
ふぅ~♪ ごくらく ごくらくぅ~
夕暮れの山から吹いてくる風がほんのりと涼しく
心地よく わたしの頬を撫でてくれます。
やっぱり来てよかった~♪
と、独り言をつぶやいていたら、
隣の部屋側から扉をノックする音が聞こえました。
どうやらお隣さんが部屋に戻ってきたようです。
わたしは、少し大きめの声で
は~い! どーぞ~!
と、応えました。
そして扉がカラカラっと開いて入ってきたのは
な、なんと!!
赤黒く日に焼けたハゲ頭と顔でお腹の出た
いかにも絶倫そうな
中年の男性ではありませんかぁ!!!
隣りの部屋の宿泊客を女性とばかり思いこんでいた
わたしは、一瞬、自分がどこにいるのか、
わからなくなるくらい動揺し
声も出せずに唖然として
ただ男性の顔を見つめるしかありませんでした。
男性は、わたしと目が合うなりニッコリと笑みを浮かべ
ありゃ~ こりゃどーもどーもぉ~♪
と言いながら上機嫌な感じで湯船に侵入してきたのです。
(※)まだまだ話しは続きますが、
長くなるので、
このあとの展開はまたいつか機会があったら
そのときに。
予告編 ; この見ず知らずの男性とはこのあと
2日2晩、
お風呂を共にするハメに。。。