『ねぇ、何で?もう私のこと嫌い?』
『一緒にいた人誰?浮気してるの?』
『電話出てよ、1日3回までならって言ったじゃない』


「こんな電話がずっと続いてて、もうしんどいって言うか」

街中のオシャレなカフェで、そう話す社会人風の男が今回のターゲット。

相談相手は、上村と原田。年齢を偽って近づいていて、ただいま年下(高校生)の“お友達”ということになっている。


近くの席には小池と尾関。大学生を装って、広げたノートとペン。そのペンには小型発信機がついていて、受信機を持ちアジトで待つ米谷へ、会話が全て筒抜けになっている。

「やるやん、なーこちゃん。」
「なーこちゃんに、ちょっと怖い役やらせたら完璧だよね。」


そんな会話の中、男と話す原田が、テーブルの下で手を軽く2回振った。

それが小池と尾関が席を立つ合図だ。もう男が店を出る。



カフェから出て、打ち合わせ通りの場所で待つ。上村原田のバイバイという声。近づく足音。
「今や。」

どん!

「きゃっ!!すみません!ほんまに大丈夫でした?あぁ、お兄さんのスーツ汚してもうた…あかんなぁ、どうしよ…。」
「いやいやこれくらい平気だよ。…それより、お姉さんこそ怪我ない?俺も前見てなかったし……あぁそうだ、お詫びにお茶でも奢りますよ。」


その突飛すぎる提案は原田仕込みだ。

『会った人に優しくするといいよ。お茶誘うとか』



上手く釣れた。


「どっかいいお店知ってたりする?」

素晴らしい。こんなにも完璧に引っかかる。


「あ、それなら、最近いいお店できたんですよ。気になってて…」
「あぁじゃあそこにしようか」


もちろん最近できた店ではない。
この世界では御用達のお店。


「ここ?いいね何か雰囲気あって」


殺される雰囲気?
イヤホンの中で誰かが呟く。

「違うやろ」

「…ん?何か言った?」
「え?何も?」


店のマスターと店員は、こっちの世界の人。

もう手は打ってある。


「いらっしゃいませー、ご注文お決まりですか?」

白いシャツに茶色のエプロンで聞きに来たのはおぜちゃん。


「私、いちごクリームパフェで、いいですか?」
「、あぁもちろん。僕はコーヒーで。」


上目遣い決まった〜。そりゃそうや、ウチの上目遣いで落ちんやつなんておらん。


しっかり一番高いやつね。

苦笑してるであろうよねの声。


おぜちゃん頼んだで。


尾関しっかり〜

莉菜と葵もイヤホンの中から応援してんで。

それが聞こえたのだろう、少し頷いた尾関は、トレイに大きいパフェとコーヒーを載せて慎重に歩いてきた。


「お待たせしました、コーヒーといちごクリームパフェです。ごゆっくりどうぞ〜」


よし、はよ飲め。

「いただきま〜す。…ん〜美味しい〜」
「美味しい?よかったね。」

コーヒーを飲んだ。出そうになったガッツポーズを必死に抑えた。


コーヒーには、よね特製の毒薬。
即効性があって、無味無臭。そしてなんと体内に残らない。どうしてかは分からないけど、他殺に見えず、心臓発作?とか何とかに見えるらしい。知らんけど。


おぉ苦しみだした〜


もうちょっとかな?
それにしても、このパフェ美味しい〜




おつかれ〜もう平気だと思うよ〜


その声にふと前を見ると、もう息をしていなかった。



マスターがにっこり微笑む。



「適当に片付けておきますよ、ながるさんとこですよね?」


「はい。お願いします。」





1度目が合えば即落ち。逃れることができずイチコロに。156