2カ月ぶりの定期検診に向かう。

病院まで電車で1時間半の道のり。


 私(母親)は、昨年5月に卵管がんのステージ2と診断された。卵巣、卵管、子宮の全摘出手術をし、約半年間の抗がん剤治療を終えた。

 今年7月に術後1年の検査で異常なしの診断をいただけた時、病院から帰宅後どさくさに紛れて中2の息子に抱きついた。


「お母さん、もう少し長生きできそうだよ。

 ありがとうね。」


息子は照れ臭そうにはにかんで、


「よかったやん」と言ってくれた。


この10日後に息子は救急車で運ばれ、その1週間後に亡くなった。



 中学入学と同時に母親が癌になり、Sもさぞかし辛い思いをしたと思う。手術の日、学校を休んで来てくれて、心配そうに声をかけてくれた。私の髪の毛が全部抜けた時、どう思っただろう。抗がん剤の副作用で動けない私を見て、どう思ってただろう。


 中学生になると生意気な事を言い出し、私と衝突する事も多々あった。無神経な言葉に、闘病中の私はカッとなって怒ったりもした。

 身長は170センチを超えていたが、心はまだまだ子供。甘えたい時もあっただろう。病気の母に思うように甘えられなかったり、想いが伝えられないもどかしさがあったに違いない。


ごめんね。

ごめんね。


もっと優しくなれなくて、本当にごめんね。


 

 ようやく私の病気が治って、これから去年出来なかった旅行やお出かけも家族みんなで楽しみにしてた。



なんで私じゃなくて息子が…?



1人グリーン車の窓の外を見て、息子の事を考える。



ああ、ダメだ…



このどん底は、いつまで続くんだろう…




私が入院中の病室