ぼくはキャラ
おもちゃといたずらがだいすき
おやつは大事にとっておいて
あとでゆっくり食べる派
.
.
.
11歳のとき
お腹が痛くて手術したもーちゃんは
すっかり元気になった
お薬飲んだり時々病院は行ったけど
(シニアなのでそれなりに)
いつもの天真爛漫な
お転婆さんに戻った
もーちゃんが
トリミングに行ってる間に
ママはドッグランへ
連れてってくれる
もーちゃんは
よそのワンコに
ガウガウするから
よその人がいない時しか
行けないので
でもほんとは
怖がりで甘えんぼ
雷や花火の夜は
ブルブル震えて
しょぼんとして隠れてる
怒ったり泣いたり
笑ったり拗ねたり
いつも全力で
健気で一途で
ママが元気ない時は
ずっとそばに居てくれる
優しい子
13歳の秋
ぼくの毛玉をちょこっと切るため
美容室に行った
いつもはすぐ帰れるのに
その日は帰してもらえなくて
終わったのは6時間後
毛玉取りだけのはずが短髪
帰ってよく見ると
喉元に傷があり出血跡
なんの説明もなかった
ママはもう美容室は行かないといった
.
.
紅葉がキレイな頃
いつものように
お散歩してたら
脚を踏み外して段から落ちた
ママともーちゃんは
キャラにしてはドジだねと笑った
今度は
匂いを嗅ごうとして
近づいた電柱にぶつかった
道路の色の違いが
段差に見えた
側溝がわからなくて
落ちそうになった
目がおかしい?
お医者さんに診てもらった
白内障
進行を遅らせる目薬をもらった
13歳
老化もあるけど
ママはトリミング美容室での
喉元を切られた痛さと怖さ
6時間も拘束された不安の
ストレスのせいだね
怖い思いさせて
ごめんねと言った
家の中なら階段もベッドも
ぴょんぴょん飛べる
でも
いつものように遊んでるのに
もーちゃんとぶつかったり
暗い場所がわからなかったり
大好きだったお庭や散歩も
怖くなって
ぼくは ひきこもりになった
春になって
14歳になった
目がみえにくくなって
耳もあんまり聞こえない
まわりが怖くなって
一日中2階にひきこもっている
ごはんや散歩のときは
ママが抱っこで降ろしてくれるけど
お転婆もーちゃんに体当たりされるので
すぐ2階の安心できる場所に行って
寝て過ごす
ごはんやおやつも
興味がなくなり
感情も乏しく
まったく吠えなくなった
ママは心配して
散歩の帰りは ほぼ抱っこ
立ち止まるとすぐ抱っこ
でも キャラ危ないよって
ママがいうと
もーちゃんがサッと側溝側にまわって
ぼくが落ちないようにしてくれるし
もーちゃんに
くっついて歩いてると
安心なので
お散歩は楽しかった
桜も観に行った
ママはぼくの写真を
いっぱい撮った
お散歩中も
ずっとぼくを心配してた
いつもの朝散歩
階段を一段ずつゆっくり上るぼくを
ママは「えらいね!すごいね!」と応援し
上り切ったらすごく褒めた
その時
もーちゃんが倒れた
脚を伸ばして
背中を反らせて
ママが名前を呼んで
背中をさすっていると
目を覚まして
また散歩に行こうとした
ママはもーちゃんとぼくを
ふたり抱っこして
すぐ家に帰ったけど
もーちゃんは 降りたい
まだ歩きたいと言った
お医者さんに診てもらったけど
どこも病気はないらしい
ただ 高齢だから
ゆったり過ごすように
とのことだった
病院を出て
もーちゃんはパパと帰り
ママは仕事に行った
ママがバイバイと手を振って
歩いて行くのを
もーちゃんはずっと
目で追っていた
夕方 ママが仕事から帰り
もーちゃんをびっくりさせないよう
そーっとドアを開けた時
ママが帰ってきて嬉しくて
いつものようにお出迎えしようと
ソファーを降りようとした
もーちゃんは
そのまま倒れた
そしてもう
目を覚まさなかった