アメリカの国語の授業でよく扱われる、
「Numbrt the Stars」を読みました。


この本は、日本でいう「スイミー」とか「ちいちゃんのかげおくり」みたいに、教科書でよく取り上げられる小説のようです。

邦題は「ふたりの星」、おそらく主人公と友だちの女の子を表しています。星は作中に出てくるネックレスかな。

原題のnumber the starsは、作中でピーターという青年が朗読した、神を讃える旧約聖書の一節「he who numbers the stars one by one」からだと思われます。

ユダヤ人の話らしい、収容所に連れて行かれる悲しい話なのかな…というのが読む前の印象。
表紙の子どもは男の子かと思いました。

実際は全然違っていて、もちろんユダヤ人追放の話は出てくるけれど、デンマーク人たちがユダヤ人をスウェーデンに逃がそうとする話で、デンマークの少女たちの日常が中心に描かれています。

せっかくなので、以下、めちゃくちゃネタバレ含んであらすじをお話します。(名前の表記とか、訳し方とか色々違っていたりするかもしれません)

興味があったらぜひ読んでみて欲しいです。
私も日本に戻ったら「ふたりの星」読んでみたいです。


【背景】
第二次世界大戦の1943年ごろ、ドイツ占領下のデンマーク

【登場人物】
◾️アンマリー・ヨハンセン(10歳)
表紙の女の子。見た目通りボーイッシュで、利発で足が早い。勇気のある子。金髪で非ユダヤ人。

◾️エレン・ロゼン(10歳)
同じアパートに住む、アンマリーの親友。
手足の長いアンマリーと対照的に、ぽっちゃりしたユダヤ人の女の子。黒髪をおさげ(pigtails)にしている。演劇が得意。

◾️カースティ・ヨハンセン(5歳)
アンマリーの妹。無邪気でおしゃべり

アンマリーとカースティの関係は、トトロのサツキとメイの関係みたいです。

◾️リース・ヨハンセン(享年18歳)
アンマリーとカースティの姉。3年前に車に轢かれて亡くなったらしい。ピーターと婚約中だった。

◾️ピーター・ネイルセン(21歳)
リースの元婚約者。リースが亡くなった後も、アンマリ一家と仲良くしている。レジスタンスの一員。非ユダヤ人

◾️アンマリーのママとパパ
優しいパパとママ

◾️エレンのママとパパ
パパは教師をしていて教育熱心。
ロゼン一家とヨハンセン一家は家族ぐるみの付き合い。

◾️ヘンリックおじさん
デンマークの北の港町に住む、アンマリーのママの兄。独身の漁師。


【第一章】
アンマリーとエレンはコペンハーゲンに住む小学生。下校中かけっこ競争をしていて、ドイツ兵に呼び止められる。銃と威圧的な兵士におびえる2人。あとから追いついた妹のカースティの無邪気さに助けられ、すぐに解放されるが、この事件がアンマリーとエレンにとって最初の恐怖体験となる。

【第二章】
カースティに王様とお妃様のおとぎばなしを聞かせるアンマリー。
ここでデンマークの歴史的背景が語られる。
デンマークにもクリスチャン10世という王様がいて、占領下でも尊厳を失わなかった。デンマーク国民は王を守るという誇りを持っている。
当時、オランダ、ベルギー、フランス、ノルウェーはドイツ軍に占領されていて、近隣では北のスウェーデンだけが安全だった。そのスウェーデンに近いデンマークの港町に、ヘンリックおじさんが住んでいる。

アンマリーの姉のリースが亡くなった事は、アンマリーは実はよく知らない。車に轢かれたと両親から聞かされた。リースの着るはずだったウェディングドレスは、婚約式に着ていた黄色いドレスとともに青いトランクにしまわれ、そのトランクは寝室の隅におかれている。


【第三章】
9月をすぎ、寒くなり始めたコペンハーゲン。ある日、ハーチさんのお店が閉店し、ハーチさん家族がいなくなってしまった。ドアの張り紙にはナチスの卍マークが。ピーターが情報を持ってきてくれた。義兄になるはずだったピーターは、レジスタンスとしてデンマーク解放のため闘っている。

ピーターが言うには、ナチスが、ユダヤ人の経営する店を閉めるらしいと。アンマリーは、エレンの家もユダヤ人だと気づく。
「すべてのデンマーク国民は、王のボディーガードというならば、すべてのデンマーク国民は、ユダヤ人のボディーガードでもあるべきよね」とアンマリー。だけど、そのために命をかけられるかしら…


【第四章】
エレンと紙人形で「風と共に去りぬ」ごっこをするアンマリー。ぷりぷりしてママと帰宅するカースティ。ろくな靴が売ってなくて、魚でできた靴(どんな靴だろう…)しか買えなかったのがご不満なカースティ。エレンが靴をインクでピカピカの黒にしてあげると言って、なだめる。

8月の誕生日に、花火が上がった話をするカースティ。花火ではなく、デンマークの船が沈められた音だった。

もうすぐユダヤ人の新年のお祝いをするというエレン。翌日、ユダヤ教の教会(シナゴーグ)に向かうエレンたち家族。
そこで、ユダヤ人が追放されるという話を聞き、エレンの両親はどこかへ隠れ、エレンはアンマリーの家にかくまわれる。


【第五章】
エレンがアンマリーの家で過ごす夜、ドイツ兵がやってくる。ロゼン一家が消えたらしく、探しに来たのだ。目覚めたエレンはつけているネックレスが外れずパニックになる。肌身離さずつけているネックレスは、ダビデの星五芒星のデザインで、ユダヤ人だとバレてしまうのだ。
アンマリーが思い切りひっぱり、手で握って隠す。
その瞬間兵士が部屋に入って来て、家族は尋問される。
エレンを長女のリースとして紹介する家族。しかしドイツ兵は、エレンだけ黒髪なのを疑う。パパが持ってきた古いアルバムの赤ちゃんの頃のリースの写真が、黒髪だったことで、なんとか誤魔化せる。

かなりハラハラするシーン。このシーンは、映画「ジョジョ・ラビット」を思い出しました。偶然にも映画のママ役はスカーレット・ヨハンセンです。


【第六章】
アンマリーは手に握ったペンダントを別のところへ隠す。
エレンはこのままでは危険なので、パパを除くママ、アンマリー、カースティ、エレンは、北のヘンリックおじさんの所へ行くことになる。

「ヘンリック、今日は魚釣りには良い日かな?タバコを持っていくよ」謎の暗号的メッセージを電話で伝えるパパ。戦時中タバコなんてもう買えない。そうか、持っていくのはエレンのことだ。

電車で北へ移動する4人。なんと電車の中にもドイツ兵。ハラハラ。
「新年のあいさつに帰省するのか?」かまをかけてくる兵士。
「は?新年?今は10月ですが」とぼけるママ。
「あててみて!」カースティ、突然クイズ出す。
ハラハラ。カースティはエレンの家族がユダヤ教の新年を祝う事を知っている。バレてしまう??
でも、カースティの答えは違った。
「おじさんの所へ、新しいピカピカの黒い靴を見せに行くの!」
また、カースティの無邪気さに助けられる。
エレン、靴を染めてあげたんだね。


【第七章】
港につき、広い海の向こうにあるスウェーデンの陸地を見る2人。ヘンリックおじさんの家で、両親に会えない不安を感じながらも、ようやく落ち着いて眠るエレン。いつもは笑ってばかりなのに、今夜だけは笑い声を出さず話し込むおじさんとママ。

【第八章】
子猫に「雷神トール(ソー)」と名付けるカースティに爆笑するアンマリー。
ヘンリックおじさんはブロッサムという名前の牛を飼っていて、毎朝乳搾りをしている。でも、作ったバターは殆どドイツ兵に取られてしまうらしい。
独身のヘンリックおじさんの部屋の汚さに呆れるママ。「お嫁さんもらわなくちゃだめよ!」


ほのぼのシーンから一転、おじさんがなぞ発言する
「明日は釣りに行く日なんだ、今晩はずっと船にいる」
変なおじさん。おじさんは晴れだろうが雨だろうが漁に出るのに。

「バルデ大おばさんが亡くなった。今夜これから棺を囲んでお別れをする」

バルデ大おばさん?そんな人、知らない。


【第九章】
おじさんの乳搾りについていくアンマリー。
「おじさんはどうして嘘をつくの?」
おじさんは乳搾りを続けながら言う。
「アンマリー、君は勇敢だ。でも、全てを知らない方が、勇敢になれるんだ」

アンマリーは、初めて兵士に呼び止められた日のことを思い出す。あの時、エレンは名前を聞かれて、しっかり答えることができた。もし、エレンがユダヤ人追放のことを知っていたら、ちゃんと返事ができただろうか。

アンマリーは、これ以上おじさんにバルデ大おばさんのことを聞かないことにした。


帰宅後、棺の周りには花が飾られ、老人や若い赤ちゃん連れの夫婦がやってきた。
普通は慣習として食べ物を持ってくるはずなのに、手ぶらでやってくる。そしてお互い何も話さない。アンマリーは気づいた、この人たちは、大おばさんの事なんて知らないのだ。

エレンは何も知らず、バルデ大おばさんのために祈っていた。
そこへ、外へ呼ばれて出て行くエレン。

家にやってきたのは、ピーターだった。
その背後には、エレンの両親もいた。


【第十章】
両親との再会に喜ぶエレン。夜も更けてきて、うとうとするアンマリー。車のヘッドライトで目が覚める、なんと、ドイツ兵がやってきたのだ。大人数が集まっていると聞き、調べに来たという。

「亡くなった人を弔っている」と答えるママ。

「なぜ棺の窓が閉まっている」と詰問するドイツ兵。
「なぜ開けない?開けてバルデ大おばさんとやらの顔を見せろ!」

ハラハラ。

ママが機転を聞かせ、「チフスで死んだ大おばさま、開けてしまうと病気がうつるかも…でも仕方ない、開けましょう!」と芝居をうつとあわてて止めるドイツ兵。ママを平手打ちし唾を吐いて立ち去る兵士。

ここでピーター、旧約聖書を開き詩を朗読。
その中の詩が、タイトルnumber the starsの元ネタ。(一つ一つ星を数えるってどういう意味なのだろう。旧約聖書が分からなくて、この詩の内容やタイトルなど不明です…)

読み終わり、棺桶の蓋を開けるピーター。

【第十一章】
棺桶の中には、大おばさんはいなかった。
代わりに、毛布や古着がくるまれていた。

毛布を老人やロゼンさんたちに配るピーター。
赤ちゃん用の服がなくて、カースティのお気に入りの赤いセーターを持ってくるママ。(カースティに後で怒られそう…と思ったけど、そんなシーンは無かった)

赤ちゃんを眠らせるため、酒を数滴飲ませるピーター。

いつも冗談ばかり言ってアンマリーを笑わせるピーターだったけれど、今夜は一切軽口をたたかなかった。

アンマリーは気づいた。ヘンリックおじさんは、彼らを船でスウェーデンへ連れて行くのだと。
彼らは何も持っておらず、毛布にくるまっているだけ。ドイツ兵に、誇りをめちゃくちゃにされ、全て奪われたのだ。

【第十二章】
船へ向かうロゼンさんとエレン。ピーターは先に他の人を港へ連れて行くので、おじさんの船まではママが連れて行くことになった。
先に発つピーターが、ロゼンパパにある包みを渡した。「ヘンリックおじさんに渡してください、大事なものなんです」

エレンたちを見送って、アンマリーは部屋で待っていた、でも睡魔には勝てずにうたた寝してしまう。はっと目を覚ますと、朝の4時をすぎている。ママはどうして帰って来ない?

窓から外を見る。森へ続く路に影が動く。ママが、倒れていた。


【第十三章】
ママは転んで足首を折ってしまったもよう。(ドイツ兵に撃たれたのかと思った、ちょっとホッとした)

ママの足元に落ちている包みに気づくアンマリー。
「ママ、これ何?」
「どうしましょう!ロゼンさんが落としたの、ピーターに返そうと思ってたのよ」
(えー、ロゼンさん、しっかりしてよーと思ってしまった…)

アンマリーは包みを受け取り、ヘンリックおじさんの元へ届けることに。

ママがバスケットにチーズとリンゴとパンを入れて、包みを底にかくして手渡す。
アンマリーは急いで走った
(アンマリーのこの頑張りのおかげで、エレン一家は命を救われます)


【第十四章】
ひたすら森の小道を走るアンマリー。
もう少しで、港に着く、その時。
唸り声を上げる犬を連れた兵士につかまってしまう。

【第十五章】
「ヘンリックおじさんに、ランチを届けに行くんです」バスケットを見せるアンマリー。
夜明けに来たことを不審がる兵士。
アンマリーは、カースティを思い出す。カースティのように、無邪気な、無知な女の子のふりをするんだ。
「おじさんは魚が好きじゃないの、漁師だから見飽きてるのよ。だからランチを届けないと」

兵士はパン、チーズを取り、犬に食べさせる。
くさりかけのリンゴを床に落とす。
犬がまだ、バスケットに反応しているので、
兵士がナプキンの底にある包みに気づいてしまった。

包みから取り出したのは、花の刺繍のされたハンカチだった。

犬はそれを嗅ぐが、すぐに興味を失う。

アンマリーはカースティの真似をして泣き出し、兵士はバツが悪くなったのかアンマリーを解放した。

アンマリーはリンゴやハンカチをバスケットに戻し、おじさんに無事届けることができたのだった。

【第十六章】
乳搾りをしながら、真実を話してくれるおじさん。
アンマリーがハンカチを届けてから20分後くらいに、別のドイツ兵が調べに来たらしい。
船には隠しスペースがあって、おじさんの船にはエレンたちロゼン一家が隠れていた。他の船にも、ユダヤ人が隠れていた。

あのハンカチは、スウェーデンの化学者が作ったウサギの血とコカインを乾燥させたものが含まれていて、犬はウサギの血に惹かれるが、コカインによって嗅覚を失うらしい。
それで、エレンたちは犬に見つからずにすんだのだ。

【第十七章】
あれから2年後、戦争は終わった。
デンマークは解放された。
アンマリーは12歳に、カースティは7歳になった。もうカースティは、おしゃべりな子どもではなく、真面目なリースそっくりの女の子になっていた。

ピーターは死んだ。
彼は捕まり、広場で銃殺された。

ピーターは処刑の前日、手紙を書いていた。
自由のために闘えて誇りに思うこと、リースと一緒に埋めて欲しいこと。

でも、ピーターの遺体は返ってこず、ただナンバーのついた野ざらしの墓に埋められた。

ピーターの墓に花を供えにいった晩、両親がリースの死について教えてくれた。

両親も知らなかったが、リースもレジスタンスの一員だったこと、アジトが見つかりドイツ兵に攻撃され、ピーターは腕を撃たれ、リースは軍の車に轢かれて死んだこと。
葬式で初めて、レジスタンスにいたことを知ったこと。(この辺、複雑だ…2人はレジスタンスで知り合ったのか、ピーターがリースを誘ったのか。私ならピーターを受け入れられるだろうか)


アンマリーは、リースを思い出しながら、部屋の隅に置かれていた青いトランクを開けた。
黄色いドレスのポケットから、ネックレスを取り出す。

エレンのネックレスだった。

「パパ、直せる?」

「ああ、ロゼンさんが戻って来たら、エレンに返そう」

「それまで私が身につけておくわ」


……

最後が怒涛の終わり方でした。
ピーターが亡くなったことがとても悲しい。

後書きで作者が書いているのですが、ピーターにはモデルがいました。Malthe-Bruun(キム・マルト・ブルーン)という、21歳で処刑されたデンマークの青年です。

彼も、処刑の前夜に母親へ手紙を書いていました。
人間の品格を持って欲しい。偏見を持たないで、理想を夢見て欲しいと。


作者はこの青年の手紙をもとに、アンマリーによく似た友だちから聞かされたデンマークの話を膨らませ、このお話を書いたそうです。
(作者はハワイで育ったアメリカ人らしい)

デンマークには杉浦千畝みたいな人たちがいて、
例えばシナゴーグでロゼンさんたちユダヤ人が、追放される事を知ったのも、
デンマークにいたドイツの外交官G.F.Duckwitzという人が、ナチスのやり方に疑いを持ち、デンマークにユダヤ人追放を知らせたかららしい。

それを信じたデンマークにいたユダヤ人の殆どは、スウェーデンに逃げることができたとか。


スウェーデンに着いたロゼンさんたちは、スウェーデンの協力者に出迎えられ、シェルターに匿われたようです。

スウェーデンだけは侵略されなかった事とか、知らない歴史のことや人物など勉強になったし、英語もセリフが多くページが130ちょいで読みやすかったです。

最後にエレンに会わせてあげたかったな。

アンマリーの賢さ、勇気。カースティの無邪気さがとても魅力的でした。

無知でいることの方が、勇敢になれるというおじさんの言葉も、響きます。


カースティの魚の靴、ママたちのエアお茶会、エレンとの紙人形遊びなど、所々ホッとするシーンもあって、魚の靴なんかただのカースティのわがまま話ではなく、後で兵士から逃れる伏線になっていたりして、読んでいて楽しかったです。

あと、色の使い方が素敵でした。
黄色いドレス、青いトランク、赤いハートボタンのセーター。

戦争前の日常のものは、カラフルな物であふれていたんだなと思われます。

日本語訳「ふたりの星」読むのが楽しみです。


次は、同じく教科書として扱われる
「スチュワート・リトル」
「シャーロットのおくりもの」
「ワンダー」
「Holes」
とかを読んでみたいです。


他にも教科書で、こんな本扱うよっていうのご存知の方いたら教えてください〜