タロウの事があってから、彼はよく娘の話をします。

嬉しそうにいとおしそうに話すのです。

私は聞きたくありません。

「ワイは子どもが出来にくいから、たぶん子どもは出来んよ。別に子どもが欲しくて結婚したわけでもないしな。このまま二人でいるのもいいよ。ただ老後が心配なだけやな」

と彼は言います。

そして娘の小さい頃や生まれたときの話をするのです。

流産には数えられないけど、タロウを失ったばかりの私にはその話がより一層ツラいのです。

彼に悪気がないのも分かります。

どれだけ娘を思っているかも…

一番かわいい時に別れてるし、前奥さんは子どもが嫌いで彼の元に子どもを残していったそうです。

なのに彼は娘だから母親と一緒の方がいいと手放したそうです。

それを今も後悔してるとこの間言いました。

「嫁さんを手放したことは後悔してない。でも、娘を手放したことは後悔してる。たぶん娘がいたら再婚なんてしてない。ミキとも結婚してないだろうな」

彼がそう言っているのを聞いたとき、やっぱり私は一番になんてなれないんだって思いました。

私はいつも二番目か三番目です。

悲しいです。

私はそれだけの人間なんだって思いました。

一生ずっとこんな思いをしなければなりません。

彼に生き別れた娘がいるのを知って結婚しました。

分かってるつもりだったけど、私は全然分かってなかったんだなって思いました。

彼と一緒にいたかったから

「そんなのは関係ないよ」

って言いました。あの時は本当にそう思っていたし…

でも、今はそれが辛いです。

タロウが出来て、やっと自分に自信が持てると思ったのに…

二兎を追うものは一兎も得ず

と言いますが、私はタロウより仕事を選びました。

育つ子なら、何をしてもしていても育つのです。

受精卵が悪かったのかもしれません。

でも、ちょっとだけ思うのです。

仕事を断って家にいたらタロウはまだ私のお腹にいたのかもしれない。

あんなにお腹が張って痛かったのに初期だからこんなもんなんだなんて思わず、病院に行ってみればよかった。

タロウは苦しんでたのかもしれない。

助けてって言ってたのかもしれない。

彼と話をしていると、そんなことばっかり考えるのです。

土曜日、病院から帰ると生理が来ました。

いつもと変わらない生理です。

タロウがいたお布団が出てきています。

タロウはまた帰って来てくれるのかな?

こんなウジウジの私のとこには帰ってきてくれないのかもしれません。

彼が愛してくれてるのは分かってるのに私は欲張りです。