『鉄道と刑法のはなし』(和田俊憲)。
「レールだけが知っている」。
本文(241頁)の本書は、Xで日本大学法学部の先生が読書記録として紹介されていらっしゃり、鉄道と「刑法」との組み合わせが面白そうと思い、注文したもの。
まず、本書の目次から。
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はじめにー「法鉄学」のすすめ
第1部・鉄道と刑法の深いつながり
第2部・身近に広がる鉄道事件
第3部・鉄道営業に隠された犯罪
あとがき
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第1部・鉄道と刑法の深いつながり
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「駅名札偽造事件と刑法の移行期」
本件で注目したいのは、大審院が旧刑法と現行刑法の両者に言及している点である。
これは、犯行は明治四一年八月八日になされたものの、裁判は新刑法が施行されてから、翌年の六月二八日になされたことによる。
すなわち、犯行と裁判の間で旧刑法から現行刑法に切り替わっており、このため犯行時に適用される刑法と裁判時に適用される刑法とが異なるという事態が起きてしまったのである。
こういった場合、ある行為に対する処罰を行うには、その行為が旧刑法だけでなく新刑法でも犯罪であると認められなければならない。
なぜなら「裁判の時点」でその行為についての処罰規定がなければ、当然裁判所には裁判をする権限が認められないことになるからである。
本判決で新刑法における公文書偽造罪の成立があわせて確認されたのはそのためである。
その一方で、実際に適用されたのは、刑が軽い旧刑法のほうである。
これは「行為の時点」でその行為についての処罰規定がなければ、その時点ではそもそも処罰されることがなかったことからきている。
言い換えると、行為の後に処罰規定を設けて遡って処罰してはならないということである。
これは近代法の大原則である罪刑法定主義の要請である。
その考え方を推し進めると、行為後に刑の重さを変更してより重い刑で処罰することも禁止されることになる。
そのため、本件では旧刑法のほうが適用されることになったのである。
(P39・40)
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