『統計学をまる裸にする〜データはもう怖くない』(チャールズ・ウィーラン)。
「オモシロ統計読本」。
まさに、そんなイメージの一冊。
8年前にFacebookに投稿した記事を加筆修正の上、ブログに移植したもの。
本書が試みているのは、統計の手法にある程度の文脈を与えること。
換言すれば、なぜそんな概念がいるのか、という話をしたあとで、各種の重要概念を説明、かつ、本来は数式やグラフが必要なところを比喩や例示で説明していること。
それが、これほど、数式にお目にかからないつくりになっている秘密かもしれません。
『はじめに』のタイトルが、『微積分は大嫌いなのに統計学が好きなわけ』という、思わず「え?」と言いたくなりそうなつかみ。
一本、とられた感覚です。
統計学の基本的なテーマってなんでしょう。
本書のカバーには構成あります。
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◯記述統計
◯相関
◯確率
◯中心極限定理
◯推定
◯世論調査
◯回帰分析
◯プログラム評価
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教養課程などで「統計学」の授業で、このほとんどを学ばれたはずです。
だけど、みんな、嫌な顔をするんですよね。
「統計」や「統計学」って聞くと。
ちなみに、今から40年前の私の教養課程でのテキストは培風館発行のものだったと記憶しています。
もしかしたら、実家の2階の物置の段ボール箱にノートも残っているかも。
マクロ経済学(講義名は「貨幣論」)の講義ノートはしっかり、書棚に残っていますが。
少し脱線してしまいました。
繰り返しになりますが、公共政策や経済学を教える著者は、本書のポイントをこう記しています。
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本書のポイントは、最も重要な統計学の概念を、もっと直感的でわかりやすいものにすることだ。
それも窓のない教室で勉強を余儀なくされた人々にとってだけでなく、数字やデータのすさまじい力に興味があるあらゆる人にとって。
(P13)
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飯田泰之氏と攻めるポイントは似ていますが、数式の記述がこちらの方がだんぜん少ない。
また、飯田氏も指摘されていましたが、日本のみならず、海外でも回帰分析は潜在的な落とし穴の多さも手伝って、間違いを起こす要因ともなっています。
回帰分析は、基本的な発想から出発せよ、つまり、2つの変数の線形関係における「最もよく当てはまる」ものを探せ、と。
本書では、身長と体重をまな板の上に乗せ、説明を施しています。
本書では、統計分析のためのソフトも紹介しています。
個個人に合ったものを利用されたらいいと思います。
『結論・統計学で答えられるかもしれない5つの問題』から、5つの問題をリストし、まとめにかえさせていただきます。
教養課程時代に、授業を受ける前に、こうしたテキストが存在していたら、と感じさせる一冊。
ダレル・ハフ『統計でウソをつく法』やかなり前に取り上げたイアン・エアーズ『その数学が戦略を決める』、そして日本人が書いたものであれば、神永正博『ウソを見破る統計学〜退屈させない統計入門』に当たられるのもいいのではないか、と思います(すべて、既読です)。
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◯アメフトの将来は?
◯自閉症の激増を引き起こしている原因は何か(そもそも特定要因があるのか)
◯良い教師や学校を見分けてそれに報いる手法は?
◯世界の貧困と闘う最高のツールは何だろう?
◯自分についての情報をだれが得られるか?
(P309〜327)
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『訳者あとがき』を含めて、全341頁、肩に力を入れずに読めました。
(2016・6・11読了)