『日本の美を求めて』(東山魁夷)。
「日本美の根源」。
本書(本文119頁)は「読書のすすめ」さんのおすすめの一冊にあがっていた一冊。
1976年9月に発刊されたもの。
日本画壇の第一人者であった著者によって著された、詩的随想といってもいい一冊。
まず、本書の構成をリストしておきたい。
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まえがき
風景
唐招提寺の魅力
山雲涛声
やまとしうるわし
二つの故郷の間に
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その本文の中から、いくつか自分の琴線に触れたものを中心に抜き書きし、ご紹介していければ、と思います。
今回は「山雲濤声」から。
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「海と山の国日本のたたずまい」
大規模な風景こそ少ないのですが、親しみやすく、また人間の心にあたたかくふれ合える、そういう風景がいたるところにあるわけです。
日本的な風景の代表というのは、長い間日本の文化の中心であった大和、あるいは京都の風景だろうと思うのです。
そういう風土に取り囲まれておりました私たちの祖先は、それによって触発され、古来、文学上あるいは美術上に数々の作品を残してきたのであります。
たしかに日本は美しい国であります。
ただ、近ごろそれが大いに荒れてきましたことは、はなはだ残念ではありますが、しかし日本の風景そのものの成り立ち、あるいは性格は、たしかに美しいと思えるのです。
たとえば富士山のようなきよらかな感じの山が、しかも高い山が、山奥でなくて、太平洋岸の海から近くにそびえ立って、仰ぐことができるということも、日本の風景の特色の一つだと思います。
(P55)
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(2024・4・29読了)