『NHK英雄たちの選択 江戸無血開城の深層』(磯田道史+NHK「英雄たちの選択」制作班。
大河ドラマでも今、放送中の『西郷どん』。
歴史に「IF」を持ち込まない。
これは磯田氏の言葉で代用するなら、「古文書」に基づいて歴史を研究していればいいという、言い方は悪いですが「古文書」至上主義となっていまいます。
例えば、市井の歴史研究家ともいえる井沢元彦氏は、古文書に書かれてあっても、その歴史の流れなどにすり合わせて、不自然というものを指摘されたりします。
ここでいう、「IF」の要素が入っていると私は感じます。
本書のテーマは、あまりにも有名な史実。
その深層に何があるのか、磯田氏の見解を軸に、歴史を専門にされない方々に、歴史の「IF」の二者択一を行うスタイル。
従来のNHKの、紋切り型とも思える構成とは明らかに異なる気がします。
それぞれ歴史観の違いもあり、例えば、本書の内容ではありませんが、明治維新という方もあれば、明治「革命」という方もあります。
私が好きな吉田松陰についても、教育者とみる方もあれば、あれは教育者とは言えないという方もあり、かつまたテロリストという方もあります。
Facebookのフレンドさんの中の歴史観もさまざま。
そこであえて、「IF」を考えてみるという必要性を、磯田氏はこのテーマを題材に主張しています。
参考までに、本書(本文201頁)の目次を提示しておきます。
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序・薩摩藩島津家の躍進を支えた四本柱
1・戦うべきか?退くべきか?最後の将軍 徳川慶喜の決断
2・勝海舟の秘策 江戸城無血開城への道
3・女たちの江戸無血開城 和宮と篤姫 大奥の闘い
4・西郷隆盛の苦悩 なぜ西南戦争は勃発したか
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そして、磯田氏のまとめの言葉を2つ抜き書きし、まとめにかえさせていただきます。
歴史観の偏ったものではなく、様々な「IF」に対する思いを提示しており、従来の歴史本に見られる、というより単独で記述され、その方の歴史観が色濃く反映されているものではいことは、評価できると思います。
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江戸城無血開城と西南戦争。
この二つの大きな画期に、ともに主役の一人として関わったのは、西郷隆盛でした。
江戸時代を通して力を蓄え、歴史の主役に躍り出た薩摩藩。
そのトップランナーとして時代を切り開いた西郷は、江戸城無血開城でやり残したことを、西南戦争でついにやり遂げたのかもしれません。
(P196)
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歴史上、さまざまな人物が際会した分岐点に注目し、そこに存在したであろういくつもの選択肢=道筋を洗い出し、それぞれ「歴史のレファレンス」を獲得することができます。
そして、歴史の分岐点で先を見通し、目の前に並べられた選択肢のなかから、自らの責任で選択肢を選ぶということは、自分の人生に主体的、積極的に取り組むことにもつながると思います。
特に若い方には、そのようにして歴史を活かしていただきたいと思います。
歴史は人生を安全に歩くための靴です。
必須の実用品です。
歴史は好き嫌いで選べる酒やタバコのような嗜好品ではありません。
(P200)
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(2018・11・18読了)
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