DNA | 恋愛研究家

DNA

?これは、ある人の恋の物語です?  

街の雑踏が消える。まるで、僕の周りだけに見えないバリアがあるように。 ただただ、意思に反しながら、
両足は規則的に歩を進めていく。 この空虚感。けれど、それが僕にとってはたまらなく心地よかった。
別に、特別変わった環境で生きてきた訳ではないと思う。 普通の家族、普通の友人たち。
だけど、たぶん僕は何かが 欠落しているようだった。たぶん、僕は人として持つべき感情を 一つ無くしてしまったのだろう。
それが何かは、よくわからないけど・・・。

夕刻の新宿。ここは、時間の経過がよくわからない。 飲みに行くサラリーマンや学生が増え始める時刻だ。
秋の乾いた風が首筋を通り過ぎて行く。  時折、一人になりたいとき、僕は、新宿の東口を出た広場に座り、 本を読む。
この雑踏が、BGMのように頭に流れ、家に一人でいるとき以上の 孤独感を与えてくれる。
そうして、夕刻が迫ってくると、本を閉じて、 アクアリウムの店を訪れる。
水槽の中で作られた人工的な生態系を見ると、 自分もその中の一部のような気がしてくる。
苔の生えた石に上り、入れられたばかりの子ガメが水槽をよじ上ろうと 悪戦苦闘していた。
「かわいそう」
その滑稽な姿をずっと見つめていた僕の隣の女性が呟いた。

?人は、自分のDNAに組み込まれていない組織を持った相手を探し求めている。
そのDNAをもって、より優秀な子孫を残そうとする本能が働くからである。
一目惚れというのは、そのDNAが惹かれ合って起きる現象なのだそうだー