1年間休業と言っても本当に仕事をしなかったわけではない。
歯科に勤めていた。大病院とかではなく、新横浜の小さな歯科医院。
その歯科の院長は前回のブログにも書いたモール加盟営業で
張りあった先輩営業のお客さんだったのだが、その院長が男性限定で
人を探していたこと、僕が会社を辞めたがっていたことを知っていた
先輩が結びつけてくれた。
その歯科は保険治療もやっていたが審美歯科と言って保険外の
100万円単位の高額な治療もすることもあり、
院長は男性の受付にすることで医院の格をあげたいと言っていた。
(実際には男性になったことで格があがるかと言えばまったくそんなことはない。)
僕はと言えばもともと音楽関係の仕事をしていたいと思っていたのが
まったく別の営業という仕事をし、それがうまくいっていなかったので
どうしたら良いか分からなくなってしまっていた。
嫌々でやっている営業ほどつらいものは無いからすぐにでも辞めたいが、
前職では適当に決めてしまって後悔した経緯がある。
そんな時にその話をもらい、条件も悪くなかった。
しかも1年間という短期でも良いかと聞いたらそれでも良いという。
(たぶん院長としてみれば本当はそれで良かったわけでもないと思う。
医院の管理者として育て、やっと使えるようになったと思っていたら
辞められてしまっては普通は困る。入れれば何とかなると思っていたのだと思う。)
僕にとって一番ありがたいのは定時で仕事をできることで、空いた時間で
勉強をすることができるし、その1年の間に次の仕事を見つけようと思っていた。
そんなわけでこの1年間は本業というよりも生活のためにとりあえず仕事に
ついていたわけで、こうして今過去を振り返って考えた時にはある意味では
冒頭に書いたように休業期間だった。そう言ってしまうと院長には申し訳ないのだが。。
世間知らずの僕が少し世間のことを知るようになり、また自分のことを知るように
なったのがこの時期だ。繰り返しになるが、高校ぐらいの時からは
自由人に見えるような人のような生き方を目標にしてきたので、
一般常識的なことを避けようとしていた。
恥さらしを承知で書くが、上司にへこへこする姿、人生の目的は出世をし、
お金を貯めて郊外に家を買うこと、そんなサラリーマンにはなりたくないと思っていた。
それでもそういう価値観で徹底していればいいのだが、僕の場合はかといって
音楽他何かを極めるわけでもなく、ただただ中途半端だった。
しかし結婚をしたことで考えは変わった。
僕1人で誰にも迷惑をかけずにやっていくことができるのなら
勝手にやればよいが、結婚はそんなわけにいかない。
相手にも相手の家族に対しても責任を持つことになる。
これでやっと狭い視野での人と違う生き方をしようなどという考えをやめ、
本気で仕事をしたいと考えるようになった。本当に恥ずかしいことだが、
事実だから仕方が無い。
それで明らかに勉強不足を感じていたから、これも恥ずかしい話、
新聞を毎日読むことにはじまり、社会人として欠けていた一般常識
的なことも勉強し(前職では誰も教えてくれなかったし、この会社も
ちょっと普通とは言えなかった。当時は。)、自己啓発本、ビジネス本
いろいろと本を読んだ。あと英語も勉強した。特に英語は重要だと思って
ベルリッツなんかにも通った。
マンツーマンレッスンだからレッスン料も高い。
奥さんに俺に投資しろと言って看護師時代に貯めていたお金を借りて通った。
(いまだに投資した分のリターンが無いと言って文句を言われる。)
あと就職活動には何か見せるものが必要だと思ってTOEICを受けた。
とりあえず何も勉強せずに受けてみたら400点だったと思う。。
600点は少なくともとっておかねばと思って勉強した。
途中で目標を切り替えて750点にして最後何とかクリアした。
決して公開するような自慢できる点数じゃないが、自分の中で
目標をクリアするということは大きかったし、今となっては仕事で英語の資料を
読まざるを得ないことが結構あるから大いに役に立っている。
歯科では受付に立っていたが、近くのサラリーマン方が通ってくる。
大手に勤めるエリート(に見えた)風の人たち。
僕は自分のあるべき姿としての仕事ではないと思っていたから、
そういう人からどういう目で見られているのだろうか、とか、
恥ずかしかったり情けなかったり感じていた部分もある。
もちろん男性が医院で受付することが恥ずかしいということでは
なくて、自分が目標を定められずにそこに居ることがだ。
そういう悔しさもあったりするから、余計に勉強はした。
MBAを受けるかと考えたこともある。
とにかくいろいろと勉強はしたが、一番大きかったのは中途半端な自分を捨てて、
とにかく死に物狂いで仕事をしようと決心を固めたことだった。
ところが最後に失敗を犯す。
それは次の就職が決まる前に自分から進んでその医院を
辞めてしまったことだ。
(続きはまた。)