皆様方は、2012年に公開されたジャッジ・ドレッドという映画をご存知だろうか
スタローンが主演を務めた95年の映画はそこそこ知られているが、カール・アーバン主演の12年版となると知っている人を中々見ることがなく、少し寂しい思いだ。

この映画はイギリス発のコミックの実写版。
端的に言うと、核戦争後の未来都市、いわゆるディストピアを舞台に、続発する犯罪と戦うエリート執行人ドレッドの活躍を描いた、バイオレンスなヒーロー物語だ。
日本では邦訳版コミックが1つしかなく、ほとんど知られていないが、欧米では非常に高い人気を誇り、もう連載から30年近くが経つという。
特徴的なマスクや、音声入力で様々な弾を撃ち分けられる「ロウギバーガン」など、ドレッドを象徴する装備の数々も強く支持され、幾度もグッズ化されているようだ。

で、そのコミックを原作とした12年の映画だが、マイナーな作品ではあるものの、とても面白い。


ストーリーラインはシンプルそのもの。
新人(正確に言えば候補生)ジャッジのアンダーソンと共に無数のギャングが巣食うビルに踏み込み閉じ込められたドレッドが、敵ギャングの親玉に法の裁きを下してビルから出るため、アンダーソンと共に行動を開始する、というものだ。
もちろん細かい展開まで紹介していけばもっと色々とあるのだが、概ねはこんな感じだ。

だが、このシンプルなシナリオが、ドレッドの圧倒的な強さと容赦のない執行の爽快感を存分に引き立てており、むしろ変に凝った展開を入れるよりもずっと素直な楽しさを味わえる。

かと言って、ただ最強のキリングマシンが流れ作業でギャングを始末するだけというわけではない。ここで、先程紹介した「無数の敵のど真ん中で新人と共に孤立」というのが活きてくるわけだ。これにより、一歩間違えれば最強のジャッジといえども命はないという緊張感が引き立てられ、そしてそんな逆境を打ち破るべくドレッドが用いる様々な戦略を存分に堪能できる。

その中でも、私が特に好きなものがある。
アンダーソンが拉致され、ドレッドがついに独りになってしまうのだが、なんと彼は諦めるどころか手近な情報端末から館内放送にアクセスし、「これからお前らの親玉を潰しに行くから覚悟しろ」という旨のスピーチをかます。
そして、端末の配置から居場所を割り出したギャングが迫ってくるのだが、ドレッドはそれも見越して待ち伏せており、集まってきたギャングを焼夷弾で焼き払って返り討ちにする様を監視カメラ越しに見せつけたのだ。
作中ではドレッドの素性は一切語られず、マスクを脱ぐことすらないが、こうして彼は幾度も凄まじい戦闘能力や戦略眼、逆境においても決して折れない不屈の闘志を寡黙に、しかし確実に見せつけ、視聴者を魅了してくれる。


逆に、アンダーソンは作中ではほとんどマスクを被らず、素性や内面についての掘り下げも何度か行われる。
新人とベテランというところも含め、ドレッドとの対比構造であることは言うまでもないが、未熟な彼女がドレッドと行動を共にし、めきめきと成長していく様もまた味わい深い。
彼女のドラマ自体はそこまで特別性があるものではないが、鉄の男ドレッドと対比されることでお互いがより一層引き立てられ、終盤で繰り広げられる共闘のカタルシスは極上のものになっている。

もちろん、アクション要素にも抜かりはない。
ジャッジの装備のギミックは小気味よく活用されるし、作中で幾度となく繰り広げられる銃撃戦も迫力満点。中でも、中盤くらいにドレッド達がガトリングガンの集中砲火を掻い潜るシーンは一見の価値ありだ。
舞台となるビルも、薄暗く入り組んだ構造がいかにも犯罪の巣窟らしい不安感を演出し、物語の盛り上げに一役買っている。


さて、ここまで色々と語ってきてなんだが、正直幾ら口で語っても、この映画の魅力の全てを説明しきることはかなり難しい。
そもそもアクション映画というジャンル自体が映像の楽しさに重点を置いたものだし、是非ともレンタル屋に行って、借りて観て欲しい。
ダーティSFや派手なガンアクションが好きであれば必ずや楽しめると保証できる、極上のエンターテイメントだ。