ハッブル宇宙望遠鏡でとらえた画像を用いて“宇宙の明るさ”のゆらぎを解析したところ、これまでゴミだと思われていた光の点が、新たな種族の天体であることが明らかになったんですねー
この天体の正体は現時点では不明なんですが、これまでの観測では把握できなかった“ミッシング・バリオン”の可能性もあるようです。


宇宙には未知の光源が存在している?

これまでに赤外線天文衛星“IRTS”や“あかり”による近赤外線領域の観測から、宇宙の“明るさ”や、その“ゆらぎ”が既知の天体から予想されるものより大きいことが分かっています。

また、可視光線でも空が予想より明るいことが確認されているので、宇宙には“未知の光源”が存在することが予想されています。

そこで、“未知の光源”を探すためJAXA宇宙科学研究所のチームが試みたのは、ハッブル・エクストリーム・フィールド”の画像の空間構造を解析し、新たな情報を引き出すことでした。
  ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した現時点で人類が手にしている最も暗い天体まで写っている画像。
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(左)ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた元画像、(右)33等級より明るい銀河など多数の天体をマスクし、宇宙の明るさを強調して、宇宙の明るさの空間構造(ゆらぎ)を浮かび上がらせたもの。
解析の結果明らかになったのは、画像に写っている、これまではゴミだと思われていた暗く小さな光の点が、実は以下のような特徴を持つ天体として数多く存在すること。

 ・点源と区別できない、直径30光年以下の大変小さな天体。
 ・大変暗い天体(見た目の等級が30等級より暗い)。
  天の川銀河内にある最も暗い恒星よりも暗いので、恒星ではないと考えられる。
 ・別のガンマ線観測の結果を考慮すると、約13億年前に急に明るくなり、
  その後、数億年以内に暗くなったと見られる。
 ・質量・光度はそれぞれ太陽の約300倍、1,000倍と推定される。
 ・最大に見積もると、全天で1,000兆個ほど存在する天体である。

こうした特徴から研究チームは、これらが新たな種族の天体である可能性があると結論付け、“フェイント・コンパクト・オブジェクト”と名付けています。

“フェイント・コンパクト・オブジェクト”の正体は現時点では不明ですが、小さめのブラックホールに物質が落ち込むときに光り輝く“ミニ・クエーサー”などが候補として考えられています。
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“フェイント・コンパクト・オブジェクト”が存在する宇宙空間の一部を描いたイラスト。
“フェイント・コンパクト・オブジェクト”は13億年前に急に明るくなり、数億年以内に暗くなった。


未発見の物質“ミッシング・バリオン”

今回発見された“フェイント・コンパクト・オブジェクト”は、“ミッシング・バリオン”と呼ばれる未発見の物質の正体なのかもしれません。

宇宙は正体不明の“ダークマター”と“ダークエネルギー”に満たされていて、身近な物質である“バリオン(原子や分子などで構成された普通の物質)”は、宇宙の中にわずか5%程度しか存在しないことが分かっています。

その“バリオン”も、星や銀河、星間ガスなどとして観測されている量はおよそ半分で、残り半分はまだ見つかっていません。
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“ミッシング・バリオン”の説明図
もし、“フェイント・コンパクト・オブジェクト”が理論予想よりも宇宙が明るいことを説明できるものだとすれば、“フェイント・コンパクト・オブジェクト”は宇宙に大量に存在し、“ミッシング・バリオン”の正体でもある可能性が出てきます。

研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡の18倍の感度で宇宙の明るさを測定できるロケット実験“CIBER-2”や、惑星探査機に搭載した望遠鏡で木星軌道から宇宙の明るさを測定する“EXZIT”など、より詳細に宇宙の明るさを測定する計画を進めています。

この計画により、“フェイント・コンパクト・オブジェクト”の正体や“ミッシング・バリオン”問題が解明されるのかもしれませんね。


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