銀河全体に広く分布する“薄いガス”と、
新たに誕生する星のもとになる“濃いガス”が、
世界で初めて同時に観測されました。

それぞれのガスが、銀河のどこにどれだけ分布しているのか?

この事が分かれば、新たに誕生する星の数が、
どのように決定されるのかも解明することができます。

なので今回の観測で得られた情報は重要な手がかりになるようです。


銀河内部のガス分布

一般的な銀河は主に、星、その材料になるガス、
大きさが1μm以下のチリ、という3つの成分からできています。

銀河でどのように星が生まれて、物質が循環し、
長い時間をかけ進化していくかを解き明かすためには、
星・ガス・チリの3成分がどこに、どれだけ存在しているのかを、
知ることが必要になります。

このうち、星については可視光線や近赤外線の観測画像、
チリについては遠赤外線の観測画像が、数多くの銀河で得られています。

でも、ガスに対応する電波の観測画像は数十個の銀河にとどまっていて、
銀河内部のガスに関する情報は乏しい状態なんですねー

特に分かっていないのが、
銀河全体にわたって広がる“薄い(密度の低い)ガス”や、
新たに誕生する星の直接的なもとになる
“濃い(密度の高い)ガス”の塊を作る“高密度ガス形成”が、
銀河のどのような場所で、どれくらいの規模で存在するのかということでした。


ガスが濃い場所ほど星が生まれやすい

今回の研究では、大阪府立大学の研究チームが、
野辺山45メートル電波望遠鏡に搭載された受信機“FOREST”を用いて、
地球から2700万光年離れた“しし座”の銀河“NGC 2903”を観測。
  “FOREST”は“薄いガス”と“濃いガス”を高感度で同時に観測ができ、
  銀河の高精細なガス画像を効率良く得ることができる。

新マルチビーム受信機“FOREST”


そして、わずか14時間(従来の7分の1程度の時間)の観測で、
“NGC 2903”全体の“薄いガス”と“濃いガス”の分布を描き出すことに成功しています。

“しし座”の銀河“NGC 2903”。(左)赤外線天文衛星“スピッツァー”が撮影した波長8μmでの赤外線画像、(中央)45メートル電波望遠鏡と受信機(FOREST)で観測した薄いガスの分布、(右)濃いガスの分布。

この観測結果と、銀河の全体的な構造を示した赤外線画像とを比較すると、
“薄いガス”が銀河全体にわたって広がっていること、“濃いガス”は中心部や棒構造、渦巻腕など、
銀河の中でもごく限られた場所に集中していることが分かりました。

こうしたガスの分布の情報をもとに、ガスの濃さ(密度)を推定して分かったことが、
銀河の中心部で最も密度が高く、その次に渦巻腕が高いこと、
棒構造で最も低くなっていることでした。

さらに、ガスの濃さを可視光線と赤外線の明るさを元にして計算した
“星の生まれやすさ”と比較したところ、
ガスが濃い場所ほど星が生まれやすいということも分かります。

これらの事が示しているのは、銀河の中で星が生まれやすい場所を見つけるには、
ガスの濃さを調べることが極めて重要だということになるんですねー

“NGC 2903”における、ガスの濃さと星の生まれやすさを比較したもの。大まかに、ガスが濃い場所ほど星が生まれやすくなっていることが分かる。

今回の研究により、銀河の中心部だけでなく棒構造や渦巻腕など、
銀河円盤の一般的な構造に対してガスの濃さを推定でき、
同じ銀河中の異なる場所で比べても、ガスの濃さが星の生まれやすさと、
深く関わっていることが初めて明らかにされました。

研究チームでは、他の銀河のガス画像も順次得ているので、
今回の成果が他の銀河でも当てはまるかどうか? の確認などの研究を進めていくそうです。


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