銀河中心の超大質量ブラックホールから吹き出す高速のジェットが、
星の誕生を促進させるようです。

これまで考えられていたのは、
ジェットは星の材料を吹き飛ばし星の誕生を抑制するということ。

これまでとは正反対の結果… 一体どうなっているのでしょうか?


ジェットが作る泡状の構造

地球から57億光年彼方にある“ほうおう座銀河団”。

この銀河団の中心にある銀河の中心には、
超大質量ブラックホールが存在しています。
  アルマ望遠鏡が解き明かす、銀河中心ブラックホールの活動
    

このブラックホールは周囲からガスを吸い込み、
その一部を高速の双極ジェットとして銀河空間に吹き出しているんですねー
  このような非常に活発な活動を示す天体を“活動銀河核”と呼ぶ。

NASAのX線天文衛星“チャンドラ”による観測で、
この双極ジェットが、銀河の両側に巨大な“泡”を作り出していることが、
明らかになっています。

泡は銀河を取り巻いていて、
非常に高温で希薄なプラズマガスで出来ていました。

あまりに高温なので、
泡のガスは、星が誕生するときに必須になる“冷えて収縮するという過程”を、
たどることは出来ないだろうと考えられてきました。


高温のガスと低温のガス

ケンブリッジ大学の研究チームはアルマ望遠鏡を用いてこの銀河団を観測。

すると、泡の側面に沿って、
低温の分子ガスが細長く分布していることが明らかになります。

低温ガスは、活動銀河核の両側に8万2000光年もの長さにわたって存在していて、
総質量は太陽100億個分にも相当していました。

この低温ガスの由来として考えられるのは、
泡によって銀河中心部から持ち上げられたものか、
あるいは泡の表面で作られたもののようです。

ほうおう座銀河団の疑似カラー画像。
(青)“チャンドラ”が撮影した高温ガスの分布。中央の銀河の上下に“泡”のような構造が見える。
(オレンジ)アルマ望遠鏡による電波観測により、銀河の方向と、泡の側面に沿った場所に細長く伸びた低温ガスの分布が明らかになった。
(背景)ハッブル宇宙望遠鏡による画像。

超大質量ブラックホールによって作られた泡状構造と、
銀河の成長に欠かせない星の材料との関係がアルマ望遠鏡による観測で、
初めて明らかになり始めたんですねー

今回の研究は、
ブラックホールが今後の星形成活動をどのように制御するのか、
ブラックホールの活動の源となる物質を銀河がどのように獲得するのか、
という2点に、新しい視点を与えてくれたことになります。

これまでは、強力なジェットを作り出すためにブラックホールが、
星の材料であるガスを消費すると、星の誕生現場がかき乱されて星の誕生は止まってしまうと、
考えられてきたからです。
  星の形成を妨げている? 超大質量ブラックホールから吹く風
    

また、活動銀河核が放つジェットや光が熱源になり、
星の誕生を妨げているとも考えられてきました。

今回観測した超大質量ブラックホールは、
ガスを噴き上げて泡状構造を作り出し、周囲のガスを加熱していました。
でも、同時に十分なガスを冷やしてもいました。

ほうおう座銀河団の中心にある銀河(イメージ図)。
銀河中心にある超大質量ブラックホールから上下に強力なジェットが噴き出していて、それが高温ガスの“泡”(青色)を作り出している。
その泡状構造の縁に沿って分布している低温ガスは、やがて銀河に落下し、星の材料になるとともに、超大質量ブラックホールのエネルギー源にもなる。

超大質量ブラックホールが、どのように爆発的星形成の暴走を抑えながら、
同時に母銀河の成長をコントロールしてきたのか?
その答えが少し見えてきましたね。


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