理化学研究所などの研究チームが、
中性子を大量に取り込んだ原子核110個を人工的に生成し、
その寿命(半減期)を高精度で測定することに成功しました。

このことは、爆発的天体現象で金やウランなどの重い元素が一気に作られる、
“r過程”を解明する重要な鍵になるようです。
超新星爆発から、さまざまな重元素が形成・放出される(イメージ図)。


重元素を作り出す“r過程”

自然界に安定して存在する元素で、鉄よりも重いものの約半数は、
超新星爆発で合成されると考えられています。

高温高密度の環境で、
原子核に取り込まれた中性子がベータ崩壊して陽子に変わり、
金やウランなどの重元素になります。

急激に進むこのプロセスは、
rapid(高速)の頭文字をとって“r過程”と呼ばれています。

ただ“r過程”は、
超新星爆発ではなく中性子星合体で起こるという説もあるんですねー


原子核の寿命

その時間スケールや重元素の生成量を理解するためには、
原子核の寿命(半減期)を知ることが重要になります。

でも、“r過程”で生成される中性子過剰な原子核を、
人工的に大量生産することは難しく、寿命の測定は困難でした。

そこで理化学研究所の研究チームを中心とする国際共同研究グループでは、
埼玉県にある重イオン加速器施設“RIビームファクトリー”を利用。

ルビジウム(原子番号37)から、
スズ(原子番号50)までの中性子過剰な原子核を生成し、
原子核110種の寿命の測定に成功したんですねー

そのうち世界で初めて寿命が測定されたものは40個。

この結果から、
特に“r過程”による重元素の合成過程において、
鍵を握る銀やカドミウムなどは従来の標準理論予想より、
30~35%程度速く崩壊することが、明らかになりました。


超新星爆発の元素合成シナリオと一致

さらに、今回得られた高精度のデータを“r過程”の理論計算に取り込み、
実際に観測される太陽系や、金属欠乏星(重元素が少ない古い星)の組成比と比較。

すると、超新星爆発における元素合成シナリオと、
矛盾しない結果が得られたんですねー

これまで“r過程”で生成される重元素の存在比には、
普遍性があると考えられていました。

ただ今回の測定でも、それが示された元素がある一方で、
一部の元素では、“r過程”の時間スケールによって、
生成量が大きく変わることも分かることに…

このことは、
「重元素存在比の普遍性が、当てはまらないケースがある」
ことを示す最初のけっかになり、
今後の観測での検証が待たれることになります。

今回の測定や、実験で得られた他のデータは、
“r過程”のシナリオと、そのメカニズムを特定する上で重要なものです。

今後、核構造や元素合成の解明に関する、
多くの成果が得られることが期待されますね。


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