NASAの“LDSD”は、将来の火星探査機に使う減速技術の実証を行う試験機です。

今回、2回目となる飛行試験が行われたのですが、
2つ搭載された減速装置のうち、1つは正常に作動したものの、
もう1つのパラシュートは展開に失敗し、太平洋上に落下。

ただNASAの発表では、実験としては成功だったようです。


“LDSD”の役割り

“Low Density Supersonic Decelerator”の略が“LDSD”です。

直訳すると“低密度超音速減速装置”という意味で、
火星のような密度の低い大気の中で、
探査機を超音速から減速させるための、新しい技術を試験するのに開発された試験機です。

機体の直径は4.7メートルで、質量は3088キロ。
その見た目から宇宙ファンからは「空飛ぶ円盤」と呼ばれていて、
NASA自身も「flying saucer」と呼んでいます。


“LDSD”が必要だった理由

火星探査機の着陸では、これまでパラシュートが主に使われてきました。

たとえばNASAは、1976年に火星着陸に成功した探査機“ヴァイキング”から、
“マーズ・パスファインダー”や“マーズ・エクスプロレーション・ローバー”、“フェニックス”、
そして2012年に着陸し、現在も活動を続けている最新の“キュリオシティ”に至るまで、
ほとんど同じ設計で造られたパラシュートを使用し続けています。

でも、その能力には限界があるので、
将来、より大型の探査機や有人火星探査船を着陸させる場合には、
役に立たなくなります。

そこで、より大型のパラシュートや、
まったく新しい減速装置が必要になってくるんですねー

“LDSD”に装備されているのは、
“キュリオシティ”などで使われたモノの約4倍の面積を持つ、
直径30メートルを超える巨大パラシュート。

そして、機体の周囲に配置された風船などを膨らませて面積を大きくし、
機体にかかる空気抵抗を増やすことで減速させる“SIAD”という新技術。

さらに“SIAD”には、
機体からガスを注入して風船のように膨らませる“SIAD-R”と、
空気抵抗の圧力を利用して展開する仕組みで、より大型の“SIAD-E”の、
大きく2種類があります。


実証試験へ

“LDSD”は、2012年から地上で試験が行われていて、
2014年6月28日には、1回目の試験飛行が行われています。

この1回目の試験では、“SIAD-R”の展開には成功したものの、
巨大パラシュートは展開に失敗。

その後、パラシュートの構造などに改良が加えられ、
今回の試験に備えていました。

また“SIAD-R”は成功したので、
2回目では“SIAD-E”が搭載されることになります。

2回目の試験は、現地時間2015年6月8日7時45分に開始。
“LDSD”は気球に吊るされて上昇していきます。

高度約36キロで分離された後、
“LDSD”は機体下部に装備されたロケット・モーターを噴射し、
高度約55キロまで一気に上昇。

そして弾道の頂点にくると、速度約マッハ3の状態で“SIAD-E”を展開して、
速度をマッハ約2.5まで落とし、続いてパラシュートを展開、
減速しつつ太平洋上に着水するという流れが計画されていました。

でも、“SIAD-E”の展開と減速には成功したものの、
今回もパラシュートが展開後に破れ、機体はそのまま太平洋上に落下…

まぁー 今回もパラシュートの展開には失敗したのですが、
NASAによると、前回の失敗に比べると進歩があり、
海上に落下した機体から映像を含むデータを回収できたので、
実験としては成功だったようです。

今後、今回得られたデータを基に、さらなる改良を加え、
2016年夏ごろに、3回目の試験飛行が実施されるようです。


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