その15≪刑務所内に蠢くhater(ヘイター)達≫
今回も前々回にも登場している、件の先生なのだが、彼は最早、完全に常軌を逸脱してしまった様だ。
(単に私が気付くのが遅かっただけかも)
先日も、ある懲役の一人が診察を願い出たところ、診療室に現れた先生は、何と驚くことに頭にヘルメットを被り(襲われる事に対する防衛手段ではないかと推測される)、何処から持ってきたのか、熊のぬいぐるみ(プーさんではない)を胸に抱き、その熊ちゃんの頭を撫でながら
「どうしたんでちゅか?」
と、こう宣ったんだそうである・・・・・・・。
当然、その屈辱以外の何物でもない対応に腹を立てた・・・と言うか、呆れた懲役が、そのまま帰ったことは言うまでもない。
何でそんな事をしてしまうのだろうか?と思わず首を傾げたくなるのではあるが、何度も書く様に、私は懲役刑という刑罰に身を服している訳なのであるから、如何に理不尽な処遇と言えど、甘んじて受け入れなければいけないのだと思っている。
それに、質はどうあれ衣食住の世話にはなっているのだから。
但し、私はこんな医者の世話には出来るだけなりたくない。それだけは確かである。
さて、ここらで本題に入るとしよう。
ほんの数日前の出来事なのだが、我が工場内にてある由々しき事態が発生したのである。と言っても、これは一般社会の常識からしてみれば、はっきり言って取るに足らないというか、どうでもいい、といった部類に入ってしまうのかも知れないが、ひとたび刑務所内で起こってしまえば大事なのである。
一体何が起こったのかといえば、それはs、マイナスドライバーが一本と、T字のカミソリが一本無くなったのだ!!
・・・・・それだけ。
あ、そう言えば、ある人のシャンプーの中身が全て捨てられて、代わりに水が入れられてたってのもあった。
これの何処が大事なのかと思われるだろうが、刑務所側からしてみれば、ドライバーなんかは逃走に使用される恐れがあるだとか、武器として使用される恐れがあるなどといった理由で普段から厳重に管理されているのである。
一日の内に七、八回は点検を行っているだろうか。
カミソリに関しても似たようなもので、無くなった際には武器や自殺に用いられることを警戒しているのだ。
そんな訳で、これ等の物が一つでも無くなってしまえば、即座に作業は中止となり、発見されるまでは作業はおろか、工場内に併設されている食堂内で座ったまま黙想を余儀なくされるのである。
そして、工場には警備隊やら金線(制服の帽子や袖に金色の線が巻かれている刑務官の通称。要はお偉いさん)やらが大勢でやって来て、工場内の全てをひっくり返されるのであった。
こうして、まるで同時多発テロの如く一日の内に約2.5件の事件が発生した訳だが、これ等が単なる紛失ではなく、悪意を抱いた者の犯行であることは自明である。
詳しい内容は、検閲の都合上、割愛させて戴くが、孔子か誰かの言葉にもある通り、人間の行動には必ず動機があって、その動機をどの様に発展させて行動しているのかを考えれば、その人は絶対に自分を隠すことは出来ないのである。
ドライバーやカミソリが無くなった場合は、勿論それを管理していた人間が責任を問われる格好となる。
私の工場は、以前にも書いた通り洋裁工場なので、ミシンを扱う人にはドライバーが一本ずつ配られているのだが、ドライバーをなくしてしまった (と言うより、盗まれてしまった) 人は、すぐに発見されない限りは懲罰の対象となってしまう。 (というかなってしまった)。
カミソリに関しては工場担当(オヤジ)が管理者なので、きっとオヤジは上司から怒られたことだろうと思われるのだが、要するにドライバーとカミソリの管理者を困らせたい人、又は足を引っ張りたい人が犯人である可能性が極めて高い、というところに辿り着く。
この様にして消去法を繰り返してゆくと・・・・・。
幸い次の日には、ドライバーは犯人と思しき男の作業席に隠されているところを発見され、カミソリに関しては別の男が作業拒否を突然し、どうやら既に自供をしたのだそうだ。
ちなみにこれ等の犯人は周囲の予想とピタリと一致していた。
犯人共はバレてしまった以上、決して工場へは帰って来れない(何をされるかわからないので)。
自業自得である。
おそらく、何処の刑務所のどの工場にも、この様なヘイター(ねたみ屋)達は存在していると思われるのだが、こいつ等には ”人でなし” という言葉がピッタリである。
何せ、どんなに真面目に務めていても、こいつ等の心無い行動たった一つで懲罰となり、仮釈放を目指している懲役の出所は先延ばしになってしまう (無期囚は一度でも懲罰に落ちてしまうと、出所が3~5年は延びると言われている) からである。
今回の様に犯人がすぐに解れば良いが、この様な不逞な輩がその辺でのうのうと生活しているかと思うと非常に不快である。
刑務所に限らず、娑婆でもタチの悪いヘイター共が、あの手この手で邪魔をしてくると思うが、そんな時は自分の周りから即座に追い出してしまう事をオススメしたい。
きっとそれが一番の解決策に違いない。
一月分賞与金 2216円
二月分賞与金 2218円
6等工 時給14円70銭
トータル 20348円