その11≪時給は9円と10銭≫
この文章は舎房内、つまり寝起きをする部屋で書いている訳だが、「今回は何を書こうかなぁ」などと考えながら、ふと天井を見上げると、何気に凄い発見をしてしまった。
それは、天井に使われている素材がアスベストなのではなかろうか。という事である。
これは専門家に聞いた訳ではないので断言はできないのかも知れないが、私の見たところ、十中八九間違いないと思われる。
聞けば、この刑務所内の建物の多くは築30年以上と古く、よって建造当時はアスベストが人体に有害であることが、世間ではまだあまり認知されていなかっただろうと推測されるのだが、ほんの数年前にアスベストに関するニュースが世間を騒がせていた事を思い出す限りでは、「こんな部屋で暮らせるワケねーだろ!!」と考えてしまうのが、ごく一般的な感想ではないだろうか。
だいたいこんなものは刑罰の一環でも何でもないのだから、互いの為にも問題が表沙汰になる前にとっとと手を打つべきなのではないかと私は思うのだが・・・。
この有害な物質について余りくどくどと書きすぎたが為に手紙の発信が許可されなくなってしまっては本末転倒もいいところなので、そろそろ話題を変えるとしよう。
以前、確かT.P.Cその2の中で、作業賞与金(つまり我々受刑者が働いて得る賃金)が余りにも安すぎると愚痴をこぼした記憶があるのだが、今回は現在の私の作業等工及び収入について書いてみようと思う。
まず作業等工に関する説明をさせて頂くが、これは簡単に言えば作業賞与金を計算する時の基準となるもので、受刑者は刑務所側から指定された作業に就くと、10等工から1等工までのいずれかに格付けされることになる。
それから、作業の内容によってA作業、B作業、C作業と3種類に区分されていて、私の様なミシンを使った洋裁や、食事を作る炊場、受刑者の髪を切る通称刈り屋(がりや)などなど、機会や器具を用いた物品制作作業や、比較的高度な知識及び技能を要する作業はA作業、体の不自由な人や問題ばかり起こすが為に昼夜共に独居に入れられている人などの居室内のみにおける作業はC作業、A作業とC作業以外の作業はB作業に区分されている。
更に、A作業は1等工まで昇等が可能なのだが、B作業は3等工、C作業は5等工までしか昇等できないのである。
私は幸いにもA作業なので1等工を目指せるのだが、そこに到達するまでの期間は、およそ3年の時を要する。
勿論、昇等する度に収入は増えていく訳だが、現段階の私の収入は微々たるもので、8月の時点で等工は8等工、8月分の月収は1156円と非常に安く、これを時給に換算すると、なんと実に時給9円10銭である・・・・。
1時間を汗水垂らして働いたところで、あの10円硬貨1枚も稼げないとは何ということだろう。
娑婆にいた頃には電話1本で100万や200万位は稼げたものだが、私の価値も地に落ちたものである。
まぁ、過去にこだわる様な腐った根性ではどうにもならないので未練がましい考え方はやめておくとしよう。
それより私はこの微々たる収入をこれから先もUPする度に文末に記録していこうと思っている。
どうせ先は長いので、塵も積もれば山となるのかどうか見届けてやろうではないか。
ちなみに、私が刑に服してから稼いだ金額のトータルは8月分を加算すると10480円である(これは以前収容されていた分類センターでの分も含む)。
この先10年数年、私はこの搾取とも言える強制労働を余儀なくされる訳だが、刑務所にはこの上更に追い討ちをかけるかの様な酷い制度が存在している。
仮に私が10年後に賞与金を50万円貯めたとしよう。
その後でもし私が何らかの反則行為(これは過失も含まれる)をやらかした場合に、賞与金が没収されてしまうという類の懲罰が課せられる可能性があるのだ。
どうせ出所したら服などを買いまくって3日以内に使い切ってしまうことがほぼ確実視されている金ではあるのだが、せっかくの貴重な労働の結晶をそんな理由でむざむざ手放す訳にはいかない。
私自身が真面目にやっていればそんな心配いらないじゃないか、と思われるかも知れないが、刑務所というのはそんなに甘いところではない。
嵌められて懲罰になる事など、日常茶飯事(若干誇張)なのである。
したがって、いくら私がおとなしくしていても、何時何が起こるかなんて知れたもんじゃないのである。
散々仕事で使われた挙句になけなしの賞与金まで奪われたんじゃせっかく綺麗になってきた私の中身が再び荒んでしまいそうなので、できればそんな目には遭いたくないものだ。
出所するまでに賞与金は一体いかほどになっているのだろう・・・。
8月の賞与金→1156円 TOTAL→10480円