その10≪無期懲役の人々≫ | The Prison Chronicle ~リアルタイム刑務所日記~

その10≪無期懲役の人々≫

 私の工場の総員は約60名と、当刑務所に以いては比較的多い方なのだが、その60名の内の約4分の1は、なんと無期懲役の受刑者達である。

 無期懲役とは何かと言えば、刑期の満了が一生訪れないという事だ。即ち、仮釈放でしか娑婆に戻ることが許されない受刑者を指す。

 これだけでは余りピンと来ないと思うので、もう少し説明させて頂くが、現行の法律では有期刑の上限は30年とされている(私がパクられた時点ではまだ上限は2年だったが)。

 無期を宣告されるという事は、単純に考えてもそれ以上の刑が妥当だと判断された訳なのであるから、この人達の起こした事件がどの程度のものなのかは容易に想像がつく。

 参考までに書いておくが、私は殺人が1件と殺人未遂が2件の計3件で、判決が16年だったのだが、もし、殺人が2件、つまり2人の人間を殺していたら、ほぼ確実に無期だったであろうと思われる。

 ちなみに、他人を3人以上殺せば、死刑を宣告されること請け合いだ。

 それから、刑務所には仮釈放という制度があって、昨今では過剰収容ということもあり、比較的多めに貰えるらしいのだが、仮に私が受刑生活を無事故で過ごしたとしても、良くて13年目か14年目といったところだろう。

 無期の人達に至っては、おそらく20年~30年が経過しないと不可能化と思われる。

 更に先にも書いた様に、無期とは刑期の終わりが無い事を意味するので、もし仮釈放されたとしても、それはあくまで仮の釈放なのであるから、どんなに些細な犯罪でも発覚してしまえば、再び無期囚として刑務所に逆戻りとなってしまうのである。

 それだけの事をしてしまったのだから仕方が無いだろう、と言われる方もいるかも知れないが、同囚としてこの様な状況下に置かれてしまった受刑者の心情は察するに余りが有る。

 刑務所の生活では、意地の張り合いみたいな部分があるのでストイックである程尊敬の目で見られる場合が多い。

 そんな訳で、中には無期であることを曖にも出さずに生活をしている受刑者もいるが、彼等の多くは現実に絶望しているに違いない。

 だから懲役達の間では、長期刑の人達を思いやるといった不文律の様なものが存在している。

 具体的な例を上げると、食事の際に出されるデザートなどの甘シャリ(これは甘い物全般を指すスラングである。刑務所では甘い物が極端に少ない為、値打ちがある)をあげたりするのだ。

 無神経な人や、食い意地の張った人はそんな事気にも留めないが、そういうところにこそ内なる気持ちが表れるものだと私は思っている。(ちなみに、受刑者同士の物のやり取りは、全て規律違反です)

 もうお分かりか思うが、無期懲役の人というのは半端じゃなく辛いのである。

 私などは、終わりが見えているだけ楽なものだ。

 人生というのは、いつ何が起こるかは誰にも分からない。

 事件なんかほんの一瞬で起きてしまうのだ。

 いざ、刑務所に来てしまったら、それはそれで学ぶべき事は沢山あるが、こんな所来ない方が良いに決まってる。

 これを見ている人の中で、これから犯罪を犯す予定のある人は、今一度考え直してみてはいかがだろうか?

 それでもやりたければ、全て自分持ちであることをどうかお忘れなく。