その8≪新法の執行と工場への配役≫ | The Prison Chronicle ~リアルタイム刑務所日記~

その8≪新法の執行と工場への配役≫

 本格的な懲役としての生活が始まってから、およそ1ヶ月半が経過した。

この間の私とその周囲は、少し慌しかったような気がする。

その最たる理由は新法の改正である。

明治時代より続いてきた「監獄法」が廃止となり「受刑者処遇方」という新法が執行されたのだ。

一応これは歴史的な瞬間と言えるだろう。


 改正された内容を全て書くのは不可能なので、ここではかい摘まむが、今回の改正でまず一番に上げられるのは、手紙と面会の制限の緩和についてだろう。

 今までは三親等(一親等は親子、二親等は兄弟、三親等は従兄弟等の親類)以内としかやり取りは許可されず、回数も入所して間も無い受刑者は手紙面会共に月一回のみだったのだが、新法下ではやり取りは誰とでも可能(建前上ヤクザは×)となり、回数も私の場合は、手紙が月5通、面会は月2回となった。

 私の場合、と書いたのには理由が有るのだが、受刑者は行状によって優遇のランクが区分されているのである。

 この区分される基準についても新法では変わってしまったのだが、ややこしいので今回は詳述しない。

 要は更生する意欲の有無によって処遇の内容が変わってくるのだ。どのランクに区分されるかは、半年に一度審査会が開かれその都度決められる。

 私は此処へ来て間も無いので、次の審査会が行われるまでは暫定的に現在の処遇下に置かれているという訳だ。

 当然今後の努力次第でまだまだ優遇される可能性は有る。

 それから、私にとって実に喜ばしかった改正の内容は、私本の冊数制限の緩和である。

 今までは居室内に持ち込める私本の冊数は、辞典などの特別図書を除いて3冊のみだったのだが、新法下では無制限である。

 厳密に言えば上限はあるのだが、それは、60リットルの容量のバッグをそれぞれが貸与され、その中に入る範囲で所持しなさい、というものだ。

 そんなに大量の本を一度に読める筈もないので、これは無制限と一緒なのである。

今のところ私の身辺で目立った変化といえばこんなところである。

とうよりも、私は受刑者生活が初めての経験なので、以前との違いについて正味のところ実感が無いのであるが、何にせよ処遇が緩和されるという事は我々受刑者にとってなによりである。


 話は変わるが、此処へ来てからの最初の一ヶ月間、私は新入教育というものを受けていた。

 これは何かというと、刑務所側は新入受刑者を所内の何処かの工場に配役しなければならねい為、この間に身分帳を作成したり、一般常識などのテストを受けさせたりして個人の適性を計るのである。

 その後に配役審査会というのが開かれ、お偉方との面会を経て初めて工場に配役されるのだが、このお偉方10人位に取り囲まれて行われる面接に私は少々砰易してしまった。

 何せ、質問してくる内容の殆どは作業と関係の無いものばかりなのである。

 その内容はこうだ、「覚醒剤はやったことあるのか?」とか「(ヤクザ同士の)娑婆からのメモ事を持ち込んだりしないだろうな?」とか「真面目にやってる人が沢山居るんだから、そういう人の邪魔は絶対にするなよ!!」etc,,,,,

 私の施設内での生活態度は、極めて真面目で温厚だという自負がある。

 そんな私と初めて言葉を交わしたにもかかわらず、頭ごなしに悪人と決めつけるかの様な物言いをされるのは一体どういうことなのだろうか?

 遺憾だ!!

 私の身分帳にはどんなことが書かれているのかとても心配である。

 そんな訳で、どんな基準で審査されたのかは一切不明なのであるが、結局私は洋裁工場に落とされた。

 だから今はミシンを使って作業をしている。(勿論全くの未経験)

 はっきり言って作業の内容なんかは何でも良い、私はそう考えている。

 与えられた役割を全うしようという気概は常に持ち合わせているからだ。

 しかし、そうした努力はきちんと反映されるのだろうか?

 まだこの刑務所の実情が見えていない為、少々の不安は拭いきれていない。

 私の残刑は14年以上だが、外で私を待っているものは非常に大きいので、期待に応える為の努力は厭わず生きていこうとココロに決めている。

 そんな私にこの先この刑務所は何を見せてくれるのだろうか。

 あまり期待はしていないが正直気になるところではある。