もぁらすの遊び場 -32ページ目



困った。


販売職というものは、離職率が高い。




毎年たくさんの新入社員が入社しては、一年が過ぎる頃には三割がた辞めていく。



正社員雇用というものには、ノルマがついて回る。



年間の店舗予算から割返して、月予算、日割り予算。



そして、一日の個人予算。



販売という仕事は楽しい。



けれど、どの店でも上手くいくわけじゃない。




「あー、どうしようかな。ね、長嶺くんどう思う?」



私は社内恋愛ののち、結婚をした。


主人は出世街道にのり、今では常務だ。



「横浜店の店長辞めるんですか?」


「そう、誰がいいと思う?渋谷店のサブの田中か、新宿店の中山?」


「池袋の、田村は」


「田村?田村はまだ2年目で……」


「彼女の笑顔は凄くいいですよ」




笑顔……?




「片桐さんにも、負けないくらい?」



ふは、っと。


滅多に笑わない長嶺くんが、冗談まで言った。



「まさか、お気に入りなの?」


「俺がですか?」



そうよね、そういうタイプじゃないものね。



「俺は公私は分けるタイプなんで」


「ああ、そうね。ごめんごめん。田村かー、検討してみるわ」





長嶺くんのことは主人が一目置いていたのを知っていたから、田村と聞いてピンとこなかったけれど、私は異例の人事で田村を横浜にまわした。




そして、田村はメキメキとその頭角を伸ばしていった。