困った。
販売職というものは、離職率が高い。
毎年たくさんの新入社員が入社しては、一年が過ぎる頃には三割がた辞めていく。
正社員雇用というものには、ノルマがついて回る。
年間の店舗予算から割返して、月予算、日割り予算。
そして、一日の個人予算。
販売という仕事は楽しい。
けれど、どの店でも上手くいくわけじゃない。
「あー、どうしようかな。ね、長嶺くんどう思う?」
私は社内恋愛ののち、結婚をした。
主人は出世街道にのり、今では常務だ。
「横浜店の店長辞めるんですか?」
「そう、誰がいいと思う?渋谷店のサブの田中か、新宿店の中山?」
「池袋の、田村は」
「田村?田村はまだ2年目で……」
「彼女の笑顔は凄くいいですよ」
笑顔……?
「片桐さんにも、負けないくらい?」
ふは、っと。
滅多に笑わない長嶺くんが、冗談まで言った。
「まさか、お気に入りなの?」
「俺がですか?」
そうよね、そういうタイプじゃないものね。
「俺は公私は分けるタイプなんで」
「ああ、そうね。ごめんごめん。田村かー、検討してみるわ」
長嶺くんのことは主人が一目置いていたのを知っていたから、田村と聞いてピンとこなかったけれど、私は異例の人事で田村を横浜にまわした。
そして、田村はメキメキとその頭角を伸ばしていった。