もう、ダメかと思ってた。
もう、この人に触れることは二度と出来ないんだとそう思っていたから、
重なり合った唇から熱が伝わった瞬間、息が出来ないくらい苦しくなって、
まだ、ズキズキと疼いている胸の痛みに気がつかないフリをした。
「……ぱい、先輩」
寒空の下で、ずっと抱き合っていたからか、身体は互いに冷たくなっていて、
私は離れようと胸の隙間の手に力を込める。
それでも先輩の力は弱まることがなくて、その幸せの中で浸りながら、
必死に不安を打ち消した。
好きだと言われたからって、浮かれる訳にはいかない。
付き合おう、って、言われた訳じゃない。
ただ、先輩が戻って来てくれたことは嬉しいけれど、状況はなにも改善されていない。
「……寒い、です」
繋がった唇の隙間から、やっとその言葉を出して身体の隙間が開いた。
「ごめん」
ああ、またごめんだ。
先輩の口からこの言葉を聞くたび、胸がちぎれそうになるくらい、痛む。
謝られるたび、お前は二番目の女だ、って言われている気がして、また泣いてしまいそうになる。
それでも、私は長嶺先輩が好きで
そうしてまでも、まだ
一緒に居たいと願ってしまう。
「……うちに、入りませんか?」
私がそう提案すると、長嶺先輩は少し躊躇したように見えた。
「……あの、……嫌なら」
「いや、そうじゃなくて」
そうじゃ、なくて?
本当に寒くて、私は身震いをした。
「じゃあ……」
寒くて、空気が澄んでいる。
その空気を吸い込むと、
先ほどまでの熱は何処かに消えたように感じ、私の心までもが急激に冷やされたようにも思えた。
私は、惑わされているんだろうか。
初めてのようなこの恋の熱に浮かれて、身体の中から警戒音が鳴っているような気がする。
それでもかまわない。
それでも、長嶺先輩から
離れたくなかった。