訳注:④ −1 ナボテの葡萄畑

 

旧約聖書の中のユダヤ歴史書の一つ「列王記第一」

上21~22章に納められている話です。

 

紀元前869年から850年までの20年間、

北イスラエル王国の王として君臨したアアハブ王

「歴代王の中でも類を見ないほどの暴君」と旧約聖書で扱われた存在で、

旧約聖書の預言者エリヤとはバッチバチの敵対関係にあったそうです。

 

妻のイゼベルはシリアの王女で、

バアル教という、オリエント由来の偶像崇拝の信仰を

イスラエルに導入しました。

(そんなこともあってヤハウェを信仰する預言者エリヤと敵対したのかな?)

アハブも妻の信仰に乗っかって偶像崇拝を行い

(つまりヤハウェの教えに従わなかったということでしょうね)、

それで神様が怒って三年半雨を降らせなかったという話もあります。

 

アハブ王はシリアの王女との結婚を通じて周辺諸国

(というか、氏族、部族という方がいいのか)との交流、

同盟を広げて大国化に成功した非常に有能な王という評価もあります。

 

 

さて、ナボテの葡萄の話です。

このアハブ王の御殿のそばに葡萄畑がありました。

持ち主はイズレエル人(ユダヤ人)のナボテという男です。

 

アハブ王はナボテにこの葡萄畑を譲って欲しいと言いました。

「代わりにもっといい葡萄畑をあげる、嫌なら銀貨で支払うよ」

と言いましたが、ナボテは

「先祖代々受け継いだ土地は譲れない。神様が許さない」

と断りました。

 

 

ここでポイント①

ナボテが断った理由は、畑は

「神から与えられた相続地、譲りの地であるから」

でした。

リリウオカラニにとってもハワイの人にとっても

ハワイの国土はまさにこの葡萄畑と同じ、

先祖代々受け継いだ、神から与えられたものでした。

 

 

ヤハウェの神の律法では、

「土地は神のものであり、

人間はその土地に住むことを許された寄留者というだけ」

なので、売り買いしてはならない、という教えがあり、

ナボテはその律法を守ったのです。

 

 

ところが断られてアハブ王は(当然でしょうけど)機嫌を損ね、

飯も食わん!腹たつ!!と激おこムキー

 

妻のイゼベルが「どうしてご飯も食べないほど機嫌悪いの」と聞くので、

ナボテの葡萄畑の一件を話して聞かせました。

話を聞いたイゼベルは、

「あなたは王様でしょ。

 さあご飯食べて元気出して。

 わたしが葡萄園を手に入れてあげる」

とうけあいました。

イゼベルはシリア人、ヤハウェの神など信じていないから、

その教えに従う必要もないのです。

 

そしてイゼベルは葡萄畑を手に入れるために陰謀を企てます。

アハブ王の名を使って手紙を書き、王の封印をして、

ナボテ住む町の長老や有力者たちに送りました。

 

手紙には、

「断食を布告し、ナボテを民の前に座らせよ。

 二人のならず者をその向かい側に座らせ、

 ナボテが神と王を呪った、と証言させよ。

 そうしてナボテを引き摺り出し、石で打ち殺させよ。」

と書いてありました。

 

町の人たちは王に言われた通りにしました。

 

 

ならず者たちが町民の前で

ナボテが神と王を呪ったと偽りの証言をし、

人々は彼を町の外に引き摺り出し、

石で打ち殺しました。

さらにナボテだけでなく、彼の子供も皆殺しにされたのでした。ガーン

酷い!!!!えーんえーんえーん

 

 

アハブとイゼベルはこうしてナボテの葡萄園を手に入れたのです。

 

 

ナボテの葡萄畑でアハブ王、イゼベルに向かい告げる預言者エリヤ

 

 

このとき、預言者エリヤの口を通して、

神からアハブとイゼベルに対し裁きの言葉が下りました。

 

「あなた(アハブ)は人殺しをした上、畑を奪い取った。

 

 犬たちがナボテの血を舐めた、その場所で、

 その犬たちが、あなた(アハブ)の血を舐めるだろう。

 

 今わたしはあなたに禍をもたらす。

 わたしはあなたの子孫を除き去り、

 イスラエルの中の、アハブに属する小童から奴隷、自由の者に至るまで

 断ち滅ぼす・・・。

 

 それはあなたが引き起こしたわたしの怒りの故であり、

 あなたがイスラエルに罪を犯させたためだ。」と。

 

さらに妻イゼベルについても、

 

「犬がイズレエルの領地でイゼベルを喰らう。

 アハブに属する者で、町で死ぬものは犬がこれを喰らい、

 野で死ぬものは空の鳥がこれを喰らう」

 

つまり、一家断絶、一族郎党に至るまで

全て滅びる、と予言したのでした。

 

 

アハブはこの言葉を聞くとガチョーン!アセアセアセアセアセアセ

とショックを受けます。

(なんといってもイスラエルの王ですから、

 ヤハウェの神を信じているわけですから)

 

すぐ自分の外套を裂き、身に粗布を纏って断食をし、

打ちひしがれて歩いた。

 

すると、預言者エリヤから再び神様の言葉が伝えられます。

 

「アハブがわたしの前にへり下っているので、

 彼が生きている間は禍を下さない。

 しかし彼の子の時代に、彼の家に災いを下す」

 

ポイント②、

親の因果が子に報い、、、って日本では言いますが、

同じようなことを旧約聖書でも言っています。

 

親が罰を受けなかったとしたら、

その子孫に必ず罰が下される。

 

リリウオカラニが本文中で

「然もなくばアハブの罰が下されることになろう。

 それがあなたの代でなくてもあなたの子供たちの代に」

と言っているのはこのことなのです。

 

今は平気なように見えても、

人を騙し、汚いやり方で神聖な土地を奪った者は、

子孫の代で必ずその罰を受けますよ、と警告しているのです。

 

もうちょっと続きますが、

ちょっと長いので、

次に分けますね。