私たち4人はそのまま森を通り抜け、しばらく街道を歩いた。

どうやら、さっきの森はヤムルへ向かう道ではなかったらしい。私とメルは、全くの反対方向へ歩いていた。

メルは植物に、「ここから一番近い町を教えて」と語りかけたらしく、木々が示していたのはギルンニガの方向だったのだ。

それに対し、ルーとサティはすごく地形に詳しかった。地図もなしに、2人でどんどん先へ進んだ。


日もすっかり暮れ、辺りが薄暗くなった頃、私たちはギルンニガに辿り着いた。

レトロアのみんな、どうしてるかな・・・。

1日の終わりを感じ、ふと今朝のことを思い出す。

眠らせてきちゃった・・・今頃、すごく怒ってるだろうなぁ。

普段は穏和な町の大人たちも、今回ばかりは許してくれないだろう。

みんなは、私とメルが古代石を盗んだと思ってる・・・・・・例えジェルバが異議を唱えても、今町は冷静ではいられない。

古代石は、それだけ大切なものなんだ。神様の象徴だから。

「ここは、古代の民を今でも崇めている唯一の町だ。」

ルーがこちらを振り返りながら、町の様子を説明してくれる。

周囲を森に囲まれた、緑豊かな居住地。レトロアに一番近い町――――といっても、歩いて半日ほどかかるけど――――だからか、流れる雰囲気が少しレトロアに似ている。

それでも、レトロアより建物の数が多く、そして大きい。

レトロアは本当に田舎で、家と学校の他には建物がないんだ。

そこらじゅうを動物が行き交ってるし、町人の人数の方が少ないくらい。

そして――――何よりも、町にある古代石が違う。

レトロアにある古代石は、“炎をまといし竜の神”の力が宿っているからか燃えるように赤いけど、ここのは茶色だ。

「ねぇメル、ここの古代石は“木幽石(ウェリア)”っていうんだって。・・・少し怖いね。」

“木々をまといし幽霊の神”・・・木幽石には、それが宿ってると言われている。

幽霊・・・私、お化けって苦手なんだよね。昔話で出てくるお化けって、みんな怖いんだもん。

そもそも、幽霊って神様なの?

「リオ、幽霊は死んだ人が神になって現れたとされるものだって、学校で習ったじゃないか。」

メルが、呆れたように怖がる私の方を見る。

「へ?そうだっけ?」

お化けとは違う・・・ってことかな。昔話では、同じようなものとして出てたけど。

私、その授業の時絶対寝てたな。全く覚えてないもん。

それにしても、メルは記憶力良いなぁ。もしかして、今までの授業の内容、全部覚えてる?

「・・・そこの馬鹿、外に捨てていいか?」

ぽつりと、ルーが溜め息混じりに呟いた。

ほえ?ここ、外だけど・・・っていうか、今めちゃくちゃ歩いてるじゃん。

私は、ギルンニガの観光、結構面白いよ。

私が首をかしげていると、ルーは更にむっとした表情になり、

「お前だけ野宿してろってことだよ!」

そう怒鳴ると、足早に町の奥まで行ってしまった。

え?ちょっと!

ルーが怒った理由が分からない。

「リオは、天然だから・・・。」

やれやれといった様子で、メルもルーの後に続く。

サティはといえば、いつの間にかルーに追いつき、1人置いていかれた私を振り返っていた。

な、何なの、どういうこと?

みんな、置いていかないでよぉ。

「待って~!」

私は必死に、ルーたちの後を追いかけた。