嘘、でしょう・・・?

誠也君とさやかちゃんが、抱き合ってたなんて・・・。

私、本当、小さい頃からタイミング悪いな。

トロいし、内気だし、いいとこなんて何もなかった。

でも、誠也君といる時だけは、そんなのもいいなって思えるようになってたんだよ。

誠也君は、いつもドジな私を助けてくれる。

そんな時だけは、私は名前どおり、お姫様になれる気がした。

でもやっぱり、私みたいな子は、さやかちゃんには勝てないんだ。

ううん、それよりも、さやかちゃんには凛君っていう彼氏がいる。

誠也君は、私みたいな子は嫌いってことだよね――――・・・。

「姫乃・・・?姫乃だよな?」

誠也君・・・。

「さ、さやかちゃんは・・・?」

「やっぱり、見てたんだな。一部始終、全部。」

私は、素直にこくんと頷く。

「さやかは、1人になりたいからって言ってどっか行った。」

誠也君はふうっとため息をつくと、私に向き直った。

その表情は、どこか悲しそうで・・・。

「姫乃は分かってると思うから、言っとくな。」

え?

何か、嫌な予感がする。

聞いちゃいけない、そう思ってるのに、私、心のどこかで聞きたいって思ってるの。

自分が傷つくだけって分かってるのに、誠也君の本心を少しでも知りたいから。

「オレ・・・幼稚舎の頃から、さやかが好きなんだ。」

・・・苦しいよ。

そんなの、直で聞いたら・・・涙、抑えられなくなるよ。

「うん・・・そっか・・・。」

でも私は、それをぐっとこらえる。

今、ここで泣いたら――――誠也君に、迷惑だものね。

「でもオレ、ポーカーフェイスが癖でさ。凛っていう彼氏が出来た時も、さやかに素直な気持ち、伝えられなかった。さやかを、誰よりも想ってるのに・・・言葉に出来ないんだ。」

「うん、分かるよ。」

私も、そうだもの。

自分が傷つくのが怖くて、誰にも本音を言えなくて。

結局私って、嘘つきなんだよね。

誠也君は、さやかちゃんの幸せを思って身を引いてるんだ。

でも私は、ただ自分が傷つきたくないだけ――――・・・。

私、よく”お人好し”って言われるけど、私はお人好しなんかじゃない。

傷つくのが怖くて、本音も言えずにただへらへら笑ってることしか出来ない偽善者。

私、そんなにいい子じゃないよ。

「私・・・私も、そうだから。」

私が言うと、誠也君はへぇ、と意外そうな声を上げた。

「姫乃は、結構素直だと思うけど。すぐ顔に出るし、言葉も率直っていうのかな。重みがある感じ。」

「え?あっ・・・。ふ、不快にさせてたら、ごめんね。」

私の言葉って、そんなに重いのかな・・・。

「違う違う!別に、悪口を言ってるわけじゃないよ。ただ、姫乃の言葉って、重みがある分気持ちが伝わりやすいっていうか。」

・・・そう、かな。

何だか、誠也君と話してると、さっきまでの苦しい心も少し軽くなるの。

誠也君、正直すぎるんだもの。

「あの・・・ありがとう。誠也君ってあんまり本音で話してくれないから・・・嬉しかった。私に、正直な気持ち言ってくれたの。」

そう、それだけでいい。

それ以上のことは何も望まない。

この気持ちだって、伝えないつもり。

誠也君と話せるだけで、私は幸せなんだから――――・・・。