ふぁ~あ。
超眠い。激眠い。
オレ、朝って苦手なんだよ・・・。
今現在、学校に登校中。
もう、日の光がまぶしすぎて、くらくらしそうだ。
もうすぐ夏だもんな~。
ん、あれ?
あれって・・・さやか?
朝っぱらからどうしたんだ、あんなところで。
「さやか?どうしたんだよ、そんなとこで突っ立って。」
「誠也・・・。」
うわっ!
ポーカーフェイスのオレも、さすがに驚きを隠せなかった。
さやかが、泣いてる!?
いつも笑ってて、アホみたいに明るいさやかが?
「な、何があったんだよ。どうしたんだよ、さやか・・・。」
オレが聞くと、しばらく口を開かなかったさやかが、ようやく口を開いた。
「・・・私ね。」
途切れ途切れの言葉だったけど、しっかり聞き取れる言葉だった。
「凛君に、フラれたかもしれない・・・。」
「え?」
さやかの口から出た意外な言葉に、オレはしばらく声が出なかった。
凛にフラれた?さやかが?
そんな・・・凛、さやかにゾッコンだったじゃん。
急に、どうして・・・。
さやかは苦しそうにうつむきながら、必死に泣くのを我慢してるように見えた。
・・・見てるこっちが辛い。
我慢なんかするなよ、さやか。
いつも底抜けに明るくて元気なさやかだけど、こんな時くらい甘えろよ。
・・・もしかして、オレに出来ることって、これくらいなんじゃないか?
さやかの傍にいてあげる。
さやかが辛い時は、支えてあげる。
いつだって、さやかの味方でいてあげる。
――――さやかの幸せを、一番に考える。
さやかははっとしたように顔を上げ、それから照れたように笑った。
「ご、ごめんね。気にしなくていいから。今の話、忘れて・・・。」
それでもさやかは、またうつむく。
・・・もう、見てらんねぇよ。
オレは反射的に、さやかを自分の胸に引き付けた。
「せ、誠也・・・?」
「放っとけるかよ。お前だったら、絶対に放っとかないだろ?オレだって、同じだ。」
そう、さやかの一番になれなくてもいい。
ただ、辛そうなさやかを放っておけなくて・・・。
さやかの胸の鼓動が、どんどん高鳴ってるのが分かる。
・・・だよな。そりゃそうだよな。
今まで、一度もこういうことをしたことがなかったんだもんな。
さやかはついに我慢しきれなくなったのか、瞳から大粒の涙をこぼす。
「わっ!」
緊張の糸が切れたように、一気に。
そんなさやかの背中を、オレは叩いてやることしか出来なくて・・・。
さやかが泣き止んだタイミングを見計らって、オレは「もう大丈夫か?」と問いかけた。
さやかは素直にこくんと頷いたから、きっと落ち着いてきたんだろうな。
「じゃ・・・私、行くね。」
そう言って、さやかがその場を離れようとした、次の瞬間。
ガタン!
大きな音が鳴ったかと思うと、足早にその場を去っていく姫乃の後ろ姿が見えた――――・・・。