あ~あ、つまんない。

さぁやがいないってだけで、日々ってこんなにもつまんないものだったんだ。

「佐方?佐方!」

「あ、何?」

オレ、ぼーっとしてったみたいで、いつのまにか崎野が横に立ってる。

しかも、仁王立ち・・・オレ、またこいつに何かしたか?

「何か佐方、3年がいなくなってから元気なくなったねぇ。私は、嬉しい限りだけど。」

「何でだよ?」

「だって、部活で窮屈な思いしなくてすむんだもん。」

ああ、そういうことか・・・。

でもオレは、そういうの興味ない。

っていうか、帰宅部だし。

「まあ、しょうがないさ。凛の生きがいは、七瀬先輩だけだもん。」

・・・うるさいな、大悟。

まあ、はずれてはない・・・けどな。

最近、崎野とはよく話すようになった。

いや、最初は本当に話すつもりなんかなかったんだけど、崎野は出席番号がオレの後ろ。

まあ、そういうのもあって・・・。

でも決して、恋愛感情とかはない。断じてない。

オレはさぁや一筋だし、崎野にも彼氏はいるからね。

「あ、そうそう、さっきのことだけど・・・。」

「ああ、また何か怒ってんのか?」

オレの言葉に、崎野はむっとした顔をする。

「”また”って何よ、”また”って。人が、いつもいつも怒ってるみたいな言い草!」

「いつも怒ってんじゃん。鬼婆崎野~。」

「何よ~!七瀬先輩にべた惚れのくせに!」

「うるさいな!悪いかよ!?っていうか、今それ関係ないし!」

また、ぎゃあぎゃあ言い合う。

その様子を横目で見ていた大悟が、

「いつまでたってもお子様だねぇ・・・。」

ってつぶやいたのが聞こえた。


で。

何でオレは伊豆にいるんだ?

いや、何でかっつーと。

この前、崎野が途中で止めた話の続き、旅行の話だったんだ。

『そういえばさ、佐方、今度の土日、暇?』

『忙しいことはないけど、さぁやが帰ってくるからな。』

『あのさ、もし暇なら旅行行かない?私のお父さんが、ぜひ別荘にって。村里も一緒に。』

『だったら、大悟と2人で行けよ。面倒だから。』

『何よ!どうせ暇なら行ってくれたっていいじゃん!』

『だから、言ったじゃん。さぁやが帰ってくるって。』

『どうせ、七瀬先輩だって疲れて何も出来ないよ。っていうか、それで外に連れ出したら可哀想。』

――――っつーわけで、大悟の説得もあって、結局崎野の別荘・・・伊豆に来た。

周りは、どこを見ても海、海、海。

こういうとこ、出来ればさぁやと行きたかったな・・・。

携帯置いてきちゃったから、連絡も出来ないし・・・。

「あ、凛。何それ、城?」

「わぁ、砂の城だー!意外と器用なんだね。」

暇だから砂で遊んでたら、大悟と崎野が寄ってきた。

・・・まあ、手先だけな。性格は、そんなに器用じゃない。

「そういえば、さぁやたちって大阪城に行ったんだよな。いいなぁ。」

「私たちだって、来年行けるじゃん。」

崎野が言ったけど、そうじゃないんだ。

オレは、さぁやと行きたい。

・・・さぁやがいれば、どこでもいい。場所なんて。

はぁ。

オレは、ため息をひとつつく。

さぁやに・・・会いたい。

たった4日だけなのに、こんなにも寂しくなるなんて・・・。

ちょっと、いやかなり情けない。

・・・早く会いたい、さぁや。