「よしっ!」

私立柳川学園。

私はそこの中等部3年、七瀬さやか(ななせさやか)。

って言っても、今日から3年、なんだけどね。

すっごく胸が弾む。

だって、新しいクラス、新しい校舎、新しい友達。

一体、何が待っているんだろう。

すごくわくわくする。

「さぁや!」

登校途中、声をかけられて振り向く。

あ、”さぁや”っていうのは、私。でも、私のことをそんな呼び方するの、1人しかいない。

「凛君!」

「おっはよ!今日は一段と元気だね。」

「だって、今日から中等部最上級生だもん。あ~、クラス替え、ドキドキするなぁ。」

1学年下の、今日から中等部2年生、佐方凛(さかたりん)君。

えっと、照れちゃうけど、一応、私の彼氏。

年下が彼氏なんて、って言う子も中にはいるけど、凛君は誰よりも正義感があって強いもん。

それに、何と言っても可愛い顔立ち。アイドルも顔負けって感じ。

私と凛君は、小等部の時から、何となく気が合った。

委員会も一緒で、その時話すようになったのがきっかけ。

私が小等部最高学年になった年――――つまり、凛君が小等部5年生になった年、凛君が急に告白してきたんだ。

私、すっごく驚いたけど、何より嬉しかった。

凛君は、誰にでも分け隔てなく優しい。

そういうとこ、すごく好きだったから。

だから、今年でつきあって3年になる。

そして、1ヵ月後がつきあった日――――記念日、なんだ。


ざわざわ。

掲示板の前には、人がごった返している。

「さやかっ。私たち、今年も一緒だよ!」

「本当!?」

「もちろん、姫乃もね。」

今話している相楽魅羅(さがらみら)と、もう1人木戸姫乃(きどひめの)は、幼稚舎の時から一緒の、親友であり幼馴染。

そして、水野誠也(みずのせいや)。

こいつは、唯一の幼馴染男子。

私にとっては、ケンカ友達にしかならないけど・・・。

「よっ。今日もアホ面してるな。」

「うわ!誠也。」

むかつく!

いつもは無口で、仲良い人以外はしゃべらない。

だから、隠れ人気があったりするんだけど、私にはさっぱり分からない!

「もう、いつまでたっても子供!」

「あはは。まあ、そう言うなって。また今年も同じクラスなんだから。」

えぇっ!?

誠也とも一緒なのぉ!?

さ、最悪・・・。

「すごいね~、あんたらも。」

「ちょっと魅羅、他人事じゃなくない?」

魅羅だって、ずっと誠也と一緒のくせに!

まあ、魅羅は気が強くてはっきりものを言う子だから、誠也も魅羅には頭が上がらないんだけどね・・・。

「あ、いたいた。魅羅ちゃん、さやかちゃん。」

「あ、姫乃~!助けてよ~。」

もう、こうなったら姫乃にすがるしかない!

姫乃は、魅羅と違って大人しくてか弱い女の子だもん!

きっと、気持ちを共有出来る・・・はずがない、か。

姫乃って、はっきり言ってお人好し。っていうか、天然。

すっごくピュアで、何事にも感動したり、困った人を見たら放っとけないタイプ。

そのくせ、人見知りなんだから困る。

「まあまあ、さやかちゃん。誠也君は、さやかちゃんのこと、すっごく理解してくれてると思うよ。」

ほら、これ。

あのね、誠也は私のこと理解してるだろうけど、それはからかうため!

私の役になんか立ってない!

「とりあえず、教室行こうぜ。ほら、姫乃。」

「う、うん・・・。」

姫乃が少し恥ずかしそうに、差し出された誠也の手をとる。

全く、誠也ったら、姫乃にだけは優しいんだから。

でも、姫乃の体が弱いことを誰よりもよく知ってるのは、誠也だもんね・・・。

しょうがない、か。

「魅羅も行こ。」

「うん。」

私たちは4人で、新しい教室――――3-5に向かった。