「ちょっとぉ、卯月ー!遅いよーっ!」

向こうで、芽美が叫んでいる。

「ごめんね、ちょっと。」

あの後、私感動で泣いちゃって――――感動で泣いたなんて、何年振りだろうね。

捺騎君はいっぱいいっぱい優しい言葉をかけてくれて、私、ずっとうん、うんって頷いてた。

それで、相当遅れて花火大会に行ったら、芽美に怒られちゃった。

「どうしたんだよ、2人とも。」

「6時に集合って・・・言いました。」

雅君やセリアにも、口々に言われる。

「えへへ、ごめんね。」

みんな、心配してくれてたんだよね。

そう思うと、ちょっと申し訳ないなぁって思う。

「でも・・・何だか卯月、さっきよりも全然元気そうです。良かった・・・。」

「セリア・・・。」

「何何、何かあったの!?」

うう、芽美、感動がぶち壊しだよ・・・。

でも、みんなにはいっぱい迷惑もかけたし、お世話になったし。

ちらっと、捺騎君に目配せする。

捺騎君も笑顔で頷いたから、私はさっきのことを話すことにした。

「あのね、実は・・・私たち、つきあうことになって。」

何か、照れるなぁ。

顔が熱い。

「えぇっ!?マジで!?」

恵太君は何も知らなかったみたいで、大きな声を上げる。

「あれ、言ってなかったっけ?卯月と捺騎は、小学校の時から相思相愛だからね~。」

「ほえ~。」

恵太君は、あんぐり口を開けた。

開いた口が塞がらないって・・・こういうことを言うのかな?

ちょっと、笑っちゃう。

「やっと・・・ですね。おめでとうございます。」

「まあ、お前らは小学校の時から何だかんだで気があってたからな。当然の結果、か。」

セリアと雅君・・・最近、何だか一緒に物事を言うことが多いよね。

こっちでも、笑いそうになる。

でも・・・みんな、ありがとう。

「みんなのおかげだよ。みんなが協力してくれたから・・・。」

「でも、結局最後は自分の力でしょ?それは、卯月が頑張ったからだって!」

芽美・・・そんなこと、ない。

芽美やセリアが、辛い時も、苦しい時も、楽しい時も、嬉しい時だって一緒にいてくれたから・・・。

後押しだって、してくれたから・・・。

だから、頑張れたんだよ。

「んじゃーまぁ、これから屋台にでも行きますか!卯月と捺騎のつきあった日記念も兼ねて。」

恵太君が言った言葉に、みんなが一気に駆け出した。


「つ、疲れた~。」

もう、バテバテだよ。

お祭りではしゃぎすぎて、もうみんな動けない。

それでも、家には帰ろうとしてるけど・・・。

「じゃ、また今度な!芽美のこと、送ってくから。集まる時には誘ってくれよ~。」

「でも恵太、2人のジャマはしちゃ駄目だよ!」

「分かってるって。んじゃ、またな!」

芽美と恵太君が、一緒に帰っていく。

いいなぁ、さすが芽美と恵太君。仲いいんだね。

「じゃあ・・・私もこの辺で。また、いつか・・・。」

「あ、ちょっと待って!オレ、セリアのこと送ってくよ。」

雅君・・・どうしたのかな?

急にセリアと仲良くなったね。

「平気です。それに、雅は家こっちじゃないでしょう?」

「いいんだよ。気にすんなって。それよりも、セリア1人の方が心配だって。」

「え?」

セリアは、ちょっと顔を赤くして驚いた表情をしてみせた。

セリアが感情を表に出すなんて、めずらしいな。

「じゃ、じゃあ・・・お願い、します。」

「う、うん・・・。」

?2人とも、何緊張してるんだろ?

さっきまで一緒に遊んでたのにね。

「ばいばーい!」

私が手を振ると、セリアは軽く会釈をした。

「何だろうね、雅君とセリア。変なの。」

「うん、何か、様子が・・・。」

まぁきっと、私たちが考えてもしょうがないことだろうけど・・・。

「・・・ねえ、卯月。」

「何?」

「僕たち、ずっと一緒にいられるかな?」

え?

捺騎君は無邪気な笑顔で問いかけてくるけど、私の心臓はひやっとした。

ずっと一緒なんて、保障出来る?

今まで、保障出来たことがあった?

時には、どうにもならないことだってある。

セリアのことだって、にゅうちゃんのことだって。

ずっと一緒にいれる、なんて、軽く言っていいのかな・・・。

「どうしたの?卯月。」

捺騎君が、心配そうに私の顔を覗き込む。

「あ、平気。だいじょぶだよ。」

でも、ちょっと不安もある。

私たちはまだ子供で、どうにもならないことが、世の中にたくさんあるんだよ――――・・・。