夏休みもピークを迎えて、すっごく暑い時期。
私たち6人は、海に来た。
そこの海辺では、毎年、夜に地元の夏祭りが開催されるんだ。
だから、今日は1日中遊ぶつもり。
「わぁ~、きれいだねぇ。」
太陽に照らされて、海がキラキラ光ってる。
まるで、宝石みたい。
「うん、本当。さて、暑いし、泳ぎますか!」
芽美ったら、早速水着に着替えちゃってる・・・。
もう、こういうところ、私より子供っぽいんだから。
「私、恵太とあっち行ってくるね!」
芽美は、恵太君を引き連れて向こう側へ走っていく。
あ~あ、芽美がいなくなっちゃった。
「では私、雅さんとあっちに行ってきます。」
えぇっ!?セリアまで!
もともと美少女のセリアに急に誘われて、雅君も顔が赤くなってる。
・・・何だか、嬉しそう。
っていうか、捺騎君と2人っきりになっちゃったよ。
・・・どうしよう。
「あ、あの、捺騎君。」
「?何?」
「は、花火楽しみだね。」
うう、上手に話せない・・・。
っていうか、どうして私こんなに緊張してるんだろ・・・。
「うん。卯月、屋台好きでしょ?一緒にまわろ。」
「え!?」
さ、誘ってくれたのは・・・素直に嬉しいけど。
ちょっと、照れるな。
「・・・僕とじゃ、嫌?」
「え!?い、嫌ってわけじゃ・・・。ご、ごめんなさい・・・。」
「そんな、卯月、謝らないでよ。」
捺騎君がにこりと笑う。
ちょっと、悲しそうな表情を浮かべながら。
胸が痛んだ。
私、捺騎君を傷つけてる・・・。
どうして、今までどおりに接することが出来ないのかな・・・。
これが、人を好きになるってことなら、・・・悲しすぎるよ、人を好きになるって。
それから私たちの間には、少し不穏の空気が流れた。
どうしよう・・・話しかけたくても、無理だよ・・・。
だって、先に突き放しちゃったのは、私だもん・・・。
お昼頃、戻って来た芽美たちが不思議な表情をする。
「あれ、どうしたの、この空気?」
「ケンカでもした~?」
ケンカ・・・じゃ、ないと思うんだけど・・・。
何だか、胸が苦しいよ。
この場にいづらい。
「めずらしいね、あんたたちがケンカするなんて。」
「ケンカじゃないよっ!さ、お昼食べよ。」
捺騎君は、無理矢理芽美たちを海の家の方にぐいぐい押す。
・・・明るく振舞ってる、心配かけないように。
そして、そんなことをさせてしまったのは、・・・私だ。
ごめんね、捺騎君。
私、高校生にもなって、こんなに子供っぽくて、迷惑ばかりかけて。
本当に・・・ごめんなさい。
お昼を食べてからお祭りまでは、また海で遊ぶことになった。
今度は、男女分かれて。
女子の方では、ビーチボールで遊んでいた。
「そういえばさ、卯月。」
「何?」
「本当にさっき、どうしたの?」
ドキン。芽美の質問に、心臓が一瞬ひやっとする。
「あの・・・何でもないの。心配かけて、ごめんね。」
芽美たちには、気づかれたくない。
こんな、うまくいかない私の心。
コントロール出来ない気持ち。
自己嫌悪・・・。
「・・・卯月、隠し事してるー。」
「えっ!?」
芽美の言葉に、心が飛び上がる。
ど、どうして分かったの!?
「もう、何年あんたと一緒にいると思ってんのよ。隠しても無駄だって。それに、私やセリアに本音でぶつかれって言ったの、卯月だよ!」
・・・そうだけど。
私、こんな本音、2人にぶつけちゃっていいのかな。
だって、2人には迷惑かけたくないし・・・。
「・・・言ってください。出来る限りで、力になります。」
セリア・・・。
この2人なら、聞いてくれるかもしれない。
っていうか、絶対聞いてくれる。
問題は、甘えていいのかっていうことで・・・。
でも・・・いいんだよね、それが友達だもん。
「あ、あのね、実は・・・。」
私は、ついていけない自分の感情の変化について、今までのことを2人に話した。
「そうなの・・・卯月、頑張って。想いは、伝えなきゃ伝わらないよ。」
ちょっと待って芽美、何で気持ちを伝える前提になってるの。
「私も、応援してます。・・・後は、当たって砕けろです。」
ちょちょっ、セリアまで。
「卯月は、自分で言うほど嫌な子じゃないよ。自信もって。」
「う・・・ん・・・。」
何だか、変な方針になっちゃった。
でも、2人が聞いてくれたおかげで随分すっきりした気がする。
今まで私、他人にはよく言ってたくせに、自分のことは溜め込んでたのかも。
それじゃあ、駄目だよね。
私も、本音でぶつからなきゃ。
「やっぱり私、告白・・・しようかな。」
逃げてたって、何も変わらない。
前に進めば、未来にある何かは変わるはず。
「そうです。後悔だけは・・・しちゃ駄目です。卯月はきっと、誰よりもそれを分かっているはず。」
「ファイト!」
ありがとう、芽美、セリア。
2人がいたら、どんなことも乗り越えられそうな気がするよ。
私、頑張ってみるね。