「卯月、最近ご機嫌だね。」
「え?そう?」
私としては、頭に1つの疑問が残ってて、すっきりしないんだけどなぁ・・・。
きっと、元気になれたのは、セリアの手紙のおかげ。
でも同時に、疑問をもたらしたのもセリアの手紙。
・・・最後に書いてあった、『捺騎への好きは違う』って・・・どういう意味かな?
「・・・私、何か最近、変だよね。」
「へ?何、どうしたの?」
芽美が心配そうに問いかけてくる。
あ、芽美、本気で心配してくれてる。
駄目だよね、迷惑かけちゃ。
「ううん、平気。ちょっと言ってみただけ。ごめんね。」
私が言うと、芽美は私をじぃっと見つめて、
「――――分かった。」
「へ?」
「卯月、恋してるでしょ。」
・・・ほえ?
「わ、私、お魚に似てきたの?ど、どうしよう・・・。」
「バカ、違う!卯月、捺騎のこと、好きなんだなって。あーあ、いいねぇ。」
・・・?
捺騎君を、好き?
そりゃあ、好きだよ。友達だもん。
「・・・ねえ、卯月。この際、はっきり言うけど。」
芽美が、指を立てて言う。
「卯月、捺騎のことを恋愛対象として見てるんだって。つまり、つき合いたいとかそういう好き!」
「うーんと、友達付き合いはもうこれで充分だよ。」
芽美もいるし、捺騎君も、恵太君も、にゅうちゃんや美咲ちゃんだっている。
・・・もちろん、セリアも。
「私、充分満足してるもん。これ以上、何かねだっても・・・。」
「違うってばー!」
わぁっ!?
芽美が怖い!
「あのね、卯月。」
「うん?」
「捺騎を見ててドキドキしたり、一緒にいるとすっごく嬉しいんでしょ?」
「うん、まあ。」
でも、それが何でだかさっぱり・・・。
「卯月、きっと捺騎と恋人同士になりたいと思ってるの。そういう好きって、分かる?」
・・・へ?
恋人・・・同士?
って、ドラマとかでよく見る、あの・・・。
「な、何言ってんの~。ああいうのって、ドラマだけじゃないの?」
「んなわけないでしょうが!」
芽美に怒鳴られる。
「あのねぇ、卯月。あんたら、もう高2だよ?彼氏・彼女くらい、欲しいと思わないの?」
「ま、全く・・・。」
だって私、人を好きになったことがないんだもん。
みんな、平等。
男子も女子も、同じだったから。
「だから、全然自覚がないというか・・・。」
しばらく、沈黙が続く。
沈黙をつき破ったのは、芽美だった。
「よし、分かった。」
「うん?」
「バレンタインで、一緒に告白しよ!」
・・・ほえ?
えぇ~!?
・・・と、いうわけで、数日後。
芽美の家にて。
「卯月・・・あんた、料理下手なんだっけ?」
「うーん、別に苦手じゃないんだけどなぁ。いつも、ドジしちゃって・・・。」
溶かしたチョコをこぼして、全部駄目にしたり。
お湯と氷水を間違えたり。
冷蔵庫に入れっぱなしにしちゃったり・・・。
「・・・卯月。」
「はい。」
「私は親友として、心底呆れました。」
「・・・はい。」
もう、自分でも驚くドジっぷり。
失敗して、結局あげられなくなっちゃうから、今回は芽美と一緒に作ってるんだ。
「ほら、やるよ!今年こそ、成功させてよ!」
「はっ、はい~!」
こうして、芽美のスパルタ料理教室が始まった・・・。
――――2時間後。
「で、出来た・・・!」
・・・ラッピングが、ぐしゃぐしゃだけど。
何とか、チョコは作ったよ・・・!
「疲れたー!卯月、ホットココアでも飲む?」
芽美が、台所の方から問いかけてくる。
「うん、飲む!」
疲れた後って、何もかもがおいしく感じるよね。
特に、寒いときのホットドリンクとか。
「・・・卯月。」
芽美がココアを持って来て、私の隣に腰かける。
「ん?」
「・・・この前、恵太にチョコあげるって言ったじゃん。」
ああ、そんなことも言ってたような・・・。
「あれ、卯月は間違って解釈してたけど・・・。卯月が捺騎を好きなのと、同じ好きだよ。」
えっと・・・つまり、ドラマみたいな・・・ってこと?
「卯月風に解釈すると、そうなるかな。とにかく、恵太が好きってこと。だからさ、卯月。私も頑張るから、卯月も頑張ってよ。」
芽美・・・。
「まだちょっと、フラれたらって思うと怖いんだけどね。」
芽美が微笑みながら言う。
・・・芽美、今すっごく女の子だ。
恵太君に恋してる、可愛い女の子。
私、それが分かるようになっただけでも、ちょっと成長だよね?
「だいじょぶだよ、芽美。」
何か、うまく言えないけど・・・。
「芽美は正義感もあって、可愛いし、・・・とにかく、自信もっていいと思うよ。何たって、私の自慢の親友だもん!それに、セリアが言ってた。辛い過去があるから、だから、強く、優しくなれるんだって。たとえ望まない結果になっても、芽美だったら乗り越えられるよ。」
「卯月・・・。」
ぽ、たん――――。
芽美の瞳から、涙がこぼれた。
「・・・ありがと。」
「え?」
「私も、卯月が親友で良かった。そんなこと言ってくれたの、卯月が初めて・・・。」
でも、本心だよ。
私、ずっと芽美の味方でいるから。
辛かったら、出来るだけ支えてあげるから。
芽美は、1人じゃないよ。
「Dear my best friends」
「え?」
「・・・英語苦手な私が、唯一セリアに教えてもらって覚えた言葉。」
私が笑うと、芽美もおなかを抱えて笑った。
――――もうすぐ、バレンタインです――――・・・。