季節は廻り、冬。
周りはバレンタインモードだけど、私たちはそんなのに流されない。
って、いつだか芽美が言ってた。
でも、でも!
「私、今年はあげよっかな。チョコ。」
芽美が、そう言いだしたんだよ!
「だっ、誰に!?」
「・・・恵太。と、ついでに雅。」
あ、お久しぶりです、雅君!
ほら、中学生の時、カラオケに一緒に行った人だよ。
でも芽美、雅君のこと、”ついで”って言ったよね・・・?
「恵太君にチョコあげるの?」
「うん・・・でも、本気だから。断られたらと思うと・・・怖い。」
「だいじょぶだよ。きっと、おいしく出来るよ!」
私の言葉に、芽美が怪訝そうな顔をした。
「・・・は?」
「え?だって、本気でチョコ作るんでしょ?でも、おいしく出来るのかが怖いんでしょ?だいじょぶだよ。本気で作ったチョコは、絶対にうまく作れるから。」
絶対に、一生懸命な気持ちは届く。
私はそう、信じてる。
「・・・ありがとね、うん。卯月に相談した私がバカだった。」
「ええ?私、何か変なこと言った?」
「・・・変なことは言ってないけど、変な解釈をした・・・。」
芽美、疲れたように去っていったけど・・・。
?何かしちゃったのかなぁ・・・?
「あ、卯月。」
廊下で、捺騎君が声をかけてくる。
「何?」
「あのさ、セリアから手紙、受け取ったんだ。ずっと怖くて、渡せなかったけど・・・。」
捺騎君が手にしているのは、シンプルな形の、白い封筒。
これ、セリアから・・・?
「ど、どうして急に。」
「本当は、いなくなる時に渡してって頼まれたんだけど、その後すぐにケンカ?っぽいのしちゃったからさ・・・。ごめんね、遅くて。」
捺騎君が、申し訳なさそうに言う。
そんなこと、ないよ。
捺騎君が謝ることなんて、1つもない。
「ありがと、後で読んでみるね。」
私、さっと受け取ると、足早にその場を去った。
平然な顔をしていたけど、心の中はばくばくいってる。
セリアからの、手紙――――!
私たちに黙っていなくなってから、2年が経とうとしていた。
『――――拝啓、本田卯月様。
急にいなくなってごめんなさい。
ただ、お別れを言うのは寂しかったので・・・。
それに、私たち、お別れなんかじゃないと思います。
・・・卯月にだけ、言いますね。
私、正直、お父さんが好きではありません。
いつもいつも、私に指図するから・・・私、お父さんといるとただのロボットなんです。
お父さんは、私を1人の人間として扱ってくれない――――・・・。
だから、私とお母さんで日本に来ました。
お母さんと2人の生活、すごくすごく楽しかった。
もちろん、卯月たちといることも。
でもお父さん、無理矢理私を連れ戻しに来ました。
せっかく、芹田高校に受かったのに・・・ちっとも、喜んでなんてくれないんです。
お父さんと2人きりの生活なんて、たえられない。
だから――――必ず、戻ってきます。
おこづかい貯めて、飛行機に乗って――――お母さんや、卯月たちのところに。
だから、さよならは言いませんね。
また、会う日まで・・・Dear my best friends,
Selia・Conet
P.S→捺騎に対しての好きは、きっとみんなに対しての好きと違う好きだよ。』
・・・セリア。
私、信じてるから。
セリアと絶対、また会えるって・・・。
「・・・その時まで、さよなら。」
私は静かに、封を閉じた。