次の日の朝。

「おっはよー!佐倉芽美、完全復活!」

「芽美。もう大丈夫なんですか?」

「うん、平気だよ。卯月もありがと。」

何だか、改めてお礼を言われると照れるなぁ。

私は、何があっても芽美の味方でいる。

そう決めたから。

「あ、そういえば卯月、捺騎と何か進展あった~?」

芽美がにやにやしながら聞いてくる。

?何かあったって言われても・・・。

「ケンカしたよ。」

「えっ!?」

「でもね、仲直りした。捺騎君、私を理解しようとしてくれてるのが分かるから。」

二重人格の私まで好いてくれる、唯一の男の子。

そっか、やっと分かった。

「みんなが、私は捺騎君が好きだって言うじゃない?それって、こういうことだったんだね。私のこと分かってくれるから、一緒にいたいと思う。」

私の言葉に、芽美とセリアはぽかんとして、

「・・・ちょっと、違いますけど。」

と突っ込んだ。

「まあ、卯月にしては大きな進歩だよ。”一緒にいたい”だなんて、つきあってるみたいじゃない♪」

芽美が楽しそうに言う。

私、またセリアに変なこと言ったかなぁ?

何だかセリア、日に日にため息の数が増えてる気がするけど。

「セリア、だいじょぶ?」

「・・・あなたの鈍感さに、驚きですよ・・・。」

セリアは、力なさそうにつぶやいた。


「卯月ー!こっちこっち!」

芽美に急かされて、急いで走る。

すると、どしゃん!

ふわふわの雪の上に、思いっきり倒れこんだ。

「いったーい。」

「卯月、大丈夫?」

芽美が手を貸してくれる。

「えへへ、だいじょぶだいじょぶ。」

季節は廻り、12月。雪が降り積もる中、私と芽美は約束の場所へと急いでいた。

あの時から、5人で集まる機会は更に増えて・・・。

週末には絶対、5人で遊ぶようになったよ。

まあ、セリアだけは「受験勉強」って言って、週末以外はほとんど遊ばなくなったけど・・・。

でも確かに、やばいかも。

どうしよっかな、高校。

特に行きたい学校があるわけでもない。

将来の夢もない。

私、自分のやりたいことなんて見つかるのかな・・・。

「卯月、どうしたの?」

「あ、ううん。何でもない。・・・何かね、私たちももうすぐお別れなのかなって。卒業式なんて、あっという間だよ。」

私の言葉に、「そだねぇ・・・。」と芽美はつぶやく。

「でも私、卯月と同じ高校行けたらいいなって思ってるよ。」

「え?」

芽美は、私をちらっと見ながら言った。

「うちらまだ、自分のやりたいこと見つけてないわけだし。一緒に考えられたらいいなって思って。」

芽美の言葉が、素直に嬉しい。

私も芽美と同じ高校に行きたい。

でも・・・ふと、ひとつの考えが頭をよぎる。

捺騎君の学校は、高校から男女共学だった気がする。

私、どうしちゃったのかな・・・。

でもね、捺騎君と同じ高校だったら、楽しいだろうなって思ったの。

「卯月、どうしたの?」

「あ、あのね、芽美。」

思い切って、芽美に話を切り出す。

「私、河浦高校に行きたいなって、ちょっとだけ思ってるの。ほら、高校からは共学だし。」

「河浦高校?って・・・捺騎の通ってる学校?」

私、こくんと頷く。

「じゃあ、私もそこにしよっかな。願書提出、もうすぐだよね?ああ、卯月にも恋する時期が訪れたのね。良かった~。」

へ?

今、鯉の話関係ないんじゃ・・・。

「問題は成績だよね。まあ、頑張れば行けないことはないか。」

「うん。前向きに考えよ。」

目標、決まったかも。

河浦高校。

捺騎君の、通ってる学校――――・・・。