季節は過ぎ、夏。
夏休みに入ろうとしているクラスは、少し騒がしかった。
「卯月!おはよっ。」
いつものように、芽美が駆け寄ってくる。
でも芽美、いつもよりちょっと興奮してない?
「ねえ、聞いた!?この中途半端な時期に、転校生だって。」
「あ、だからみんないつもより騒がしいんだぁ。納得納得。」
私が一人でうんうんと頷いていると、芽美が「知らなかったの?」という風にした。
「そんなに有名なの?」
「そりゃそうよぉ。何たって、超!美少女だよ!」
「顔、見たの?」
「見てないけど・・・。結構、噂になってるから。」
ふぅん、そうなんだ。
でも私、そういうの興味ないや。
それよりも大切なことが、私にはたくさんあるもん。
「あ、メールだ。」
画面に表示された名前は、「捺騎君」。
あれぇ、またか。
ついさっき、10分前にもメールが来たんだ。
一体、どうしたんだろ・・・?
「何それ、捺騎からのメール?」
芽美が横からひょこっと顔を出す。
「うん、らしい。最近、向こうからよく来るんだよね。」
私が言うと、芽美は急ににこやかになって、
「そっかそっか、捺騎も頑張ってるねー。」
と言って、どこかへ行ってしまった。
?芽美、何が言いたいのかな・・・?
「おい、チャイム鳴ったぞー。着席!」
わわっ、やばい!
急いで席に戻らないと。
と思ったら、ガタンッ!
思いっきり、コケちゃった・・・。
「卯月、大丈夫?」
女子から心配の声が飛び交うけど、男子は知らないふりだ。
別に、心配してほしいわけじゃないよ。
でもやっぱり、小学校の頃みたいに仲良く出来ないんだなと思って・・・少し悲しくなった。
「ふう。」
やっと自分の席までたどり着いて、ため息をつく。
「さて、今日は転校生を紹介する。入れ!」
先生の大きい声に、ガラッ。
教室のドアが開く。
堂々と入ってきたのは、金髪をふたつ結びにしている女の子。
可愛らしい顔立ちをしているけど、どことなくミステリアスなんだ。
「セリア・・・。セリア・コネットです。よろしくお願いします。」
それが、セリアと私の出会い――――・・・。
「セリアちゃん。」
「セリアでいいです。何ですか?」
「その・・・何で敬語なの?」
芽美の問いに、セリアちゃんは表情を変えずに答える。
「癖です、意識してるつもりはないんですけど。日本語にすると、どうしても敬語に・・・。」
「じゃあやっぱり、外国の子?」
今度は私が聞く。
「はい。イギリスから来ました。お母さんが日本人で、それで・・・。」
「へえ、ハーフなんだ。何か、すごいなぁ。」
本当に私、ハーフの子ってすごいと思う。
だって、何カ国も言葉をしゃべれるし、顔立ちがとっても綺麗なんだもん。
セリアちゃんも、ちょっと童顔だけど、とっても整った顔立ちをしてる・・・。
「すごくないです。・・・そういえば、あなたたち、名前は?聞いてなかったですよね?」
「あ、私佐倉芽美!こっちは本田卯月。先に説明しとくと・・・。」
「いいよ、芽美。また後できっと、理解してもらえる。」
芽美が言いたいことが、分かってしまった。
きっと、二重人格のことだよね。
でも、今はどうしてか言ってほしくない。
捺騎君のように、理解してもらえるかが怖いから――――・・・。
ってあれ、どうして私、すぐ話が捺騎君に移るんだろう?
何だろう、この変な気持ち――――・・・。
何だか、落ち着かないよ。
どうしよう、私―――――。