「卯月ー!」
親友の佐倉芽美(さくらめみ)が、私を呼ぶ。
「早くー!同窓会、始まっちゃうでしょ。」
「ごめん、今いく!」
私、本田卯月(ほんだうづき)は、中学3年生になったばかり。
だから、みんなが受験って言っても、自覚ないんだよね、まだ。
だから私、普段はのんびりしてて天然だねってよく言われるけど・・・。
中学1年生の頃、クラスではいじめがあった。
メンバーも悪かったけど、先生も悪かったのかな。
その時私、思わずやめてって言って・・・。
それでもいじめてた子たちはやめないから、ついに私は、
「・・・さっさとやめろっつってんだろうが、このクズが!」
って叫んじゃった。
そう、実は私、相当な二重人格の持ち主。
おっとり天然系⇔怒りっぽい怪力女
らしくて・・・。
自覚はないけど、不正を見た時やキレた時によく出るんだって。
私、それが悩みの種なんだけど、まあいっか。
って思ってる、普段ののん気な私です・・・。
「みんなっ、久しぶりーっ!」
「おおっ、芽美と卯月!?変わってねーな。」
今日は、小学6年生の時のクラスの同窓会。
芽美と私は、小学2年生からずっと一緒。
一番の親友なんだ。
「卯月、まだ二重人格出るのー?」
「へ?」
ちょっと派手目だった女の子、齋藤遥華(さいとうはるか)ちゃんが聞いて来る。
「うーん、本当は今だに自覚してないけど・・・。」
「まだ!?やっぱり本当の卯月は、相変わらずのんびりしてるっていうか、天然っていうか。」
遥華ちゃんが笑いだす。
でも、私思うんだけど。
本当の私って、どっちなの?
どっちも、本当の私じゃないの?
怖い方の私は、偽者なの・・・?
ふいにそう思っては、怖くなる。
私がうつむいてると、1人の男の子が駆け寄ってきた。
「ねえ、卯月。僕のこと、覚えてる?」
「へ?・・・あ、捺騎君。」
「ピンポーン!」
捺騎君、藤田捺騎(ふじたなつき)君は、私と同じ天然キャラだった子。
背も小さくて、女の子みたいな顔してるから、よく女の子と間違われるんだって。
やっぱり、変わってないなぁ・・・。
「捺騎君、男子校を受験したんだっけ?」
「うん、そう。だけど、入学初日に女子と間違えられて。騒ぎになっちゃって、大変だった。」
捺騎君は、にこにこしながら話をする。
そういうとこ、私、好きだな。
今の中学校の男の子って、みんな乱暴だし性格悪いから苦手。
でも捺騎君は平気。
「おっ、卯月と捺騎のペアだ!」
「お前ら話してると、どんどん話の趣旨が変わってくよな。」
「まあ、しょうがないんじゃん?卯月と捺騎だし。」
1人の男の子を始めとして、みんなが口々に言う。
こういう笑い飛ばしてくれる感じ、好き。
私、今までのクラスで、このクラスが一番好きだったもの。
ほら、中学校になると、どうしてか男女別れて行動するでしょ?
冷やかしとかも起きる。
でも私は、そういうのっておかしいと思う。
だって、男女仲良く出来た方が絶対いいじゃない。
前にそれを芽美に言ったら、「あんたって本当に天然だね。」って言われたけど・・・。
「あ、そうだ。僕、携帯持ったんだ。卯月は?」
「あ、私も。中学生になったからって。」
「じゃあ、メアド交換しない?」
「うん、いいよ。」
ほらね、こうやって仲良く出来た方が、とっても楽しいじゃない。
「あの子、初恋もまだだから。」
芽美が、クラスの子にそう言ってるのが聞こえた。