どうしよう・・・。

私、麻紀をあんなに怒らせるなんて・・・。

「神子、どうしたの?こんな所で。」

後ろを振り向くと、そこには啓明先輩が立っていた。

大人っぽくて、本気で私のこと心配してくれてるような・・・。

そうだ、私、私は、この人に恋をしたんじゃないの?

小学生の時から、見てきたんじゃないの?

――――桃華ちゃんといることが、啓明先輩の幸せなんて限らない――――。

ふいに、麻紀の言葉が頭の中に蘇る。

麻紀の言う通りかも。

啓明先輩の幸せは、啓明先輩が決める事なんだ――――・・・。

「何でもないです。それより先輩、桃華ちゃんとのパート練習は?」

「ああ、放置してきた。せめて他のヤツがいればいいのにさ、2人だけだし。」

「えーっと・・・桃華ちゃんのこと、好きじゃないんですか?」

「好きか嫌いかって言われたら、嫌いだな。ああいう人に媚びるヤツは苦手だ。神子みたいに、普通にしてくれた方がいい。」

ああ、桃華ちゃん、早速アピールしたのね・・・。

桃華ちゃんは可愛いから、そこら辺の男子ならコロッと落とせる。

でも先輩は、自分自身も媚びるのは苦手だし、人に媚びられるのも苦手だ。

そういう人のことは、とことん嫌っていく。

何だか、ふいに嬉しくなった。

私は、そんな先輩を好きなったんだ。

最初の頃は突っつきにくかったから、正直言って怖かった。

でも、先輩私のこと覚えていてくれたから・・・。

その時、私は初めて恋をしたんだ。

みんなにいくら趣味が悪いって言われても、啓明先輩の言葉に落ち込んでも、頑張っていけたのは本気だったから。


好きです、先輩――――・・・。

誰よりも、ずっと。

いつかこの想い、届きますよね――――・・・?


「あれ?そういや麻紀は?」

啓明先輩がつぶやく。

「あ、そういえば。追いかけて来ます。」

「ケンカでもしたの?」

啓明先輩は、不思議そうな顔で言う。

そりゃそうだよね・・・。

私たち、普段あまりケンカしないから。

「でも、絶対絶対すぐ仲直りします。麻紀が、大切なこと教えてくれたから。」

私はそう言って、駆け出していった――――。


「麻紀っ!」

「神子・・・。」

麻紀が暗い顔で立っていた。

「どうしたの?」

「どうしたのって・・・怒ってないの?」

えぇ?

麻紀の言ってる意味が、よく理解出来ないよ・・・。

「だって私、自分の意見ばっかり押し付けて・・・。神子は、自分なりに決断したのに。私、偉そうなこと言えないのに・・・。」

・・・麻紀。

ずっと、そのことを気にしていてくれたの?

「平気だよ、麻紀。私、麻紀のおかげで目が覚めた。もう私、二度と逃げないから。先輩のこと、諦めたりしないから。だから、麻紀・・・。」

「神子・・・。うっ・・・わぁぁぁっ!」

麻紀はしゃくりあげて泣き出した。

ごめんね、ごめんねと何度も繰り返しながら――――・・・。