「ちょっ、ど、どういうこと!?」

「いえ、そのままの意味なんですけど・・・。神子先輩に相談しちゃ、迷惑でしたか?」

「め、迷惑じゃないけど・・・。」

まさか、桃華ちゃんまで啓明先輩を好きだなんて。

「こういうのって、意外と友達に相談出来ないんですね。・・・先輩だし。神子先輩なら啓明先輩と仲良いし、信用出来ますし。」

・・・こういう時って、どうすればいいんだろう。

私、素直に桃華ちゃんのこと好きだし、桃華ちゃんを裏切ろうとも思ってない。

桃華ちゃんは、私を信用してくれてるみたいだし・・・。

でも、心のどこかにあるんだ。

啓明先輩を取らないで・・・って。

協力したくない・・・って気持ち。

「あの、私・・・。」

「神子先輩、あの・・・協力、していただけますか?」

「えっ・・・。」

私は、言葉に詰まる。

どうしよう・・・。

そんな言い方されたら、断れなくなっちゃうよ・・・。

「やっぱり、駄目、ですよね・・・。」

桃華ちゃんが、しゅんと肩を落とす。

駄目、桃華ちゃんを悲しませちゃ。

協力、しなきゃ・・・。

「ごめんごめん、平気だよ。分かった、前よりも一緒にパート練習するよう、強くおしておくよ。」

「!ありがとうございます!」

一瞬にして、桃華ちゃんの表情がパッと明るくなった。

いい、よね・・・。

だって桃華ちゃん、こんなに幸せそうだもん。

啓明先輩の幸せが、私の幸せだもん・・・。


「神子、それでいいのっ!?」

麻紀が絶叫する。

「最初から啓明先輩と仲良かったのは、神子なんだよ?そんなに簡単に渡しちゃっていいの!?」

「正直・・・どうしようか迷った。でも私、桃華ちゃんも好きで啓明先輩も好きだから・・・。大好きな2人が幸せになってくれれば、それでいいの。」

「神子・・・。」

そう、しょうがない。

きっと、啓明先輩、私のこと恋愛対象として見てないもん。

ほら、よく言うでしょ?

人は自分の持っていないモノを持っている人に、魅力を感じる・・・って。

最初から話が合って、波長が合った私たちは、いくら頑張ってみても好きあうことは出来ない。

そう、思ったから。

「神子・・・そんな子だったっけ?」

「へ?」

「小さい時から見てきた神子は、少なくとも人に幸せを押し付けるような子じゃなかった。――――桃華ちゃんといることが啓明先輩の幸せだなんて、限らないじゃない!」

「麻紀!」

麻紀はそう言い残して、どこかへ走り去っていってしまった―――――・・・。