どうしよう・・・。

思わず、保健室飛び出してきちゃった・・・。

しかも、李駆斗にも当たっちゃったし・・・。

「あーあ、最悪・・・。」

私はそう、つぶやいた。

李駆斗は、何も悪くないのに。

私のこと、心配してくれてたのに・・・。

「ちょっと、紫昏!?」

「あ、幸湖。」

向こうから、幸湖が駆けてくる。

「理科、終わっちゃったよ。どうしたの?」

「あ、何でもないの。ごめん・・・ね・・・。」

ぽ、たん・・・。

私の頬を一滴、涙がこぼれ落ちた。

「!?ちょっと、本当に大丈夫?」

「うん・・・平気だよ・・・。」

そう言いながら、私の頬がどんどん涙で濡れていく。

駄目だ、もう限界・・・。

「・・・紫昏、話なら聞くよ。私たち、親友でしょ?」

幸湖・・・。

「聞いてくれる?」

私が言うと、幸湖は力強く頷いた。


「―――ということで・・・。」

「うっそ!李駆斗君って、あーいうのが好みだったの!?信じられない!」

幸湖が憤慨する。

「・・・にしても、やっと言ってくれたね、紫昏。」

「え?」

「とっくに気づいてたっつーの!だって紫昏、分かりやすいもん。」

ああ、李駆斗を好きってことか・・・。

「ごめん、幸湖。私、自分でも信じられなかったし・・・。」

そう、3年生になるまでは、本当に思ってもいなかった。

まさか、李駆斗を好きになるなんて・・・。

「でもさ、紫昏の方がずっとずっと一緒にいて、李駆斗君のことよく分かってるし・・・。」

「いいの、幸湖。私、気づいたの。李駆斗の幸せを願う方が、私にとっても幸せなんじゃないかって・・・。」

李駆斗が好きだから、大好きだから、李駆斗には幸せになってほしいの。

そうしたら、しっかり諦められる気がして・・・。

「紫昏。・・・あ。」

幸湖が、ふいに声を上げる。

「え・・・?」

私もその方を向くと、そこには息を切らせた李駆斗が立っていた。

「李・・・駆斗・・・?」

「どうしたんだよ、紫昏。急にどっか行くから、心配したんだぞ。」

心配、またしてくれたんだね・・・。

でも、李駆斗が心配するべき人は私じゃないもん。

「・・・栗本さんが好きなんでしょ?」

「は?」

「・・・おめでと。」

私、笑顔で言えてるかな?

おめでとう、って・・・。

「お前、何言ってんだよ。」

へ?

李駆斗の急な言葉に、ビックリした。

「だって、両想い・・・。」

「はぁ!?オレと栗本が?ないない!」

えぇ?

「だってあいつ、男だぜ?」

えぇ―――――っ!!?

「え、だってあんなに女の子らしい・・・。」

「ああ、そういや言ってたな。お前に女と間違えられたから、もう話したくないって。」

あの時態度が冷たかったのは、そういうことか・・・。

「・・・にしてもお前・・・。」

「何?」

「本っ当に昔からドジだよな。」

ああ、最近はあまり格好悪いところ見せたくなくて、ドジってなかったから・・・。

こんな風に笑って言われるの、久しぶり・・・。

「しょうがないでしょ!ねえ、幸湖も間違えてたよね!?」

「さあ、知~らない。」

もう、幸湖ったら!

でもその後でこっそり、「良かったね。」って言ってくれたから・・・。

本当の幸湖の優しさは知ってるよ、幸湖。


そして、この出来事のすぐ後に、

別れの時期は迫っていた―――――・・・。