小学校の校庭に、立派な桜の木が咲き誇る。

今日から私、佐藤紫昏(さとうしぐれ)も、この小学校に通うんだ。

私の幼稚園からこの小学校に来たのは私だけだから、不安もたくさんあるけど・・・。

うん、大丈夫!

とか思って歩いてたら。

「きゃっ!」

いったーい。

私、石につまづいて転んじゃった。

あーあ、恥ずかしい。

このドジな性質、何とかならないかなぁ。

幼稚園の頃から、男の子に言われ続けてきたこと。

「とろい。」「どんくさい。」

って・・・。

辛かったけど、我慢しなくちゃいけないんだ。

だって、本当のことだから・・・。

「ダサ。」

だ、誰よ!?

このタイミングで、一番気にしてること言うのは!?

「ああ、悪りぃ悪りぃ。口がすべって、本音が出ちまった。」

振り向くとそこにいたのは、意外にも顔立ちの整った男の子だった。

本音を言うと、かっこいい・・・。

「おいチビ、さっさと立てよ。何か、オレが悪者扱いみたいじゃん?」

むかっ、前言撤回!

性格最悪!

「あんた程チビじゃありません~!それに、あんたが悪者なのは事実でしょ!?」

「何だと!?オレは事実を言っただけで、間違ったことは言ってねーよ!」

「言った!だって、あんたの方が小っちゃいもん!」

「じゃあ背比べしよーぜ。今日が勝負だ!」

「こらっ!あなたたち、入学式の次の日に遅刻しないの!」

先生が入ってきて、とりあえず一時休戦になったけど・・・。

何なの、あいつ!?


「うっそ!同じクラス!?」

さっきの最悪男、1年2組に一緒に入ってきた!

「昨日、気づかなかったのかよ?はっ、さすがトロ子だな。」

むっかつく!

「私はトロ子なんかじゃない!佐藤紫昏!」

ちゃんと名前があるのに!

「お前、言ったな?」

「へ?」

「佐藤、って、言ったよな?」

な、何?急に改まって。

「やっぱりトロ子だ。オレ、ずっとお前の後ろの席にいたのに気づかなかったのかよ?オレは佐藤李駆斗(りくと)!出席番号、お前の後ろだよ。」

「えぇ~!?」

な、何でよりにもよって、こいつ!?

っていうか、全く気づかなかった・・・。

うう、こいつに言われても仕方ないじゃん・・・。

「あ、大人しくなった。ついに自覚?」

何よ。もう、突っかかってこないでよ。

私、自分のドジさに嫌気がさしてくる・・・。

するとふいに、頭の上に手が置かれた。

見ると、佐藤李駆斗が私の頭をたたいていた。

ぽんぽんって、優しいたたき方・・・。

「・・・何?」

「いや、別に。気まぐれっていうか、お前でも泣きそうな顔すんだなーと思ってさ。」

「・・・からかってる?」

「ううん、別に。」

その後も佐藤李駆斗は、私をなぐさめるように、ずっと頭から手を離さなくて・・・。

こうやって、ちょっと甘酸っぱくて苦い、出会いの季節は過ぎていったのです・・・・・・。