荒木共同温泉(大分県由布市)
15年ぶりに訪ねた湯布院に愕然とした。駅前から延びる道はまるで清里。かつての風情はまるで感じられない。昭和の時代に見かけた、洗面具を持った着物姿のお婆ちゃんは幻となった。思い出が汚されそうな気がして、レンタサイクルを駆って、中心部から離れた。少しハズれたら、さっきの喧騒が嘘のよう。由布岳の雄大な姿が心を慰めてくれる。さてまだ入っていない共同浴場に行ってみよう。JR久大本線沿いに日田方面へ向かって走ること5分。線路沿いにそれと分かる建物が見えた。踏切はないが踏み跡がしっかり線路を横切っている。線路内立入禁止の看板が立っているが、これを通らねば、湯小屋には近づけないのだ。線路を渡ればしっかりした小道がアプローチとなって湯小屋まで続いていた。暗黙の了解で存在する道なのだろう。小屋の前には汲み上げ口があって、どんどん湯が流れ去っている。湯量は豊富みたいだ。木造の懐かしい建物。入口の料金箱に100円を投入し、さっそく中へ入った。脱衣場と浴室が一体化した、昔ながらのパターン。コンクリートの浴槽を見ると透明度の高い綺麗な湯があふれている。どうやら一番風呂っぽい。裸になって、そっと湯に手を入れる。むむむ。かなり熱い。別府の熱い湯より熱い。一番風呂だから埋めるとマズイかな。根性を決めて埋めずに入った。そーっと入る。びりびりと体を熱が走っていく。この感覚は追憶物件となった福井の天谷鉱泉以来か。じーっとしていたら体が馴染んで気持ち良くなってくる。不思議だなあ。さて、入る時より出る地獄。湯に対する抵抗が大きいから、より一層、熱く感じるのだ。傍から見たら漫画だと思うが、文字通り飛び出た。源泉を口にしながら、体を冷やす。無味無臭のクセのない湯だ。列車の音が聞きたいと思い、しばらく粘ってみたが、やっぱりローカル線。名残惜しいが次の湯に向かおう。(MEMO)レポートは平成24年。(追記)暗黙の了解がダメになったのか令和元年12月、追憶物件に。残念無念