岡山も北に10kmほど上がれば、ぐっとのどかな景色が展開する。地図を見ると、桃太郎伝説発祥の地とされる笹ヶ瀬川上流に温泉マークがある。確か、ここは野谷温泉と呼ばれ、観見荘という大きな宿があるはずだ。ハイキングがてら岡山駅から歩いてみることにした。途中、苫田温泉の豪華な大浴場を楽しんだ後、笹ヶ瀬川に沿って上流へ向かう。小さな川だが渓谷は美しい。ようやく宿の門らしき所へ到着した。ところが宿が見当たらない。建物があったらしい場所には、小さな建物があるだけだ。
近づいて事情を聞いてみると、宿は数年前に廃業し、今はこの建物を拠点に温泉水を宅配販売しているらしい。がっかりして帰ろうとしたら、管理している女性が「良かったらお風呂に入っていきますか?」と声を掛けてくれた。何と入浴設備があるのだ。しかもお金はいらないと言う。ありがたい。早速、遠慮なく浴室に向かう。
小さな建物だから、当然浴室も小さい。4人でいっぱいになるぐらいの規模だが、窓からは渓谷が眺められて最高のロケーションだ。鉱泉臭はかすかに認められるものの、単純弱放射能泉だから浴感に特徴は見出せない。それでもちゃんと掛け流されているのがウレシイ。まあ何よりも、こんなに素晴らしい風呂に入れてくれた好意に感謝感激だ。お礼に温泉を求めようと思ったが、ペットボトルの単位で買えるような代物ではなく、何度もお礼を言って立ち去ることになった。
(MEMO)
レポートは平成5年。今はこの場所に「一湯館」なる立派な日帰り施設ができている。もちろん有料で800円だが、やっぱり掛け流しで、なかなかの施設らしい。野谷温泉のデータは毎分5リットルの湧出だったから、新源泉に切り替わった模様。
