小学1年生の時、小学3年生だった兄とともに買い物帰り、遠回りしてワザワザ火事を見に行った。
火事はほとんど消えかけていた。燃えた家は、当時の警視総監が住んでいた、とても大きな2階建てのお屋敷だった。燃えた柱は黒く、その柱と柱の間にある壁は、灰色で不気味なイメージを膨らませる模様が、炎によって怪物の様に描かれていた。また、燻る煙は、描かれていた怪物を演出をして、不気味さを増幅させていた。
私と兄は燃えかすの火事現場を凝視して、しばらく立っていた。立っていると言うか炎で生み出された怪物の不気味さで動けなくなっていた。兄が帰るかと、声を出さなければ、足が踏み出せなかった。
ふたりとも、何も話さず、家に着いた。迎えた母が、顔色を変えたふたりを見て、何なの、と、尋ねた。兄が火事現場を見に行ったとひと言。母が馬鹿だね、と。
その夜から、兄と私は、燃えかすの火事現場で描かれた怪物の夢で何度もうなされた。夜にトイレに行くのも辛くなった。兄も私も、ワザワザ見に行ったのを後悔した。
今思うと、恐怖の怪物のイメージが、頭中で増えに増えていっぱいなってしまった。そして、想像力たくましい若さって凄いなって、歳をとって思う。
