母が施設に入る時、本を読みたいと言うので、手持ちの本を数冊貸した。吉行淳之介という作家で、母にはじめて好きな作家だと言った。
はじまりは、童謡という短編小説が中学の教科書に載っていて、それが私の琴線にふれたから。話は、少年が病気になり、病気になる前と治った後の変わったことが、ふわっとした感覚で描かれていた。あと、布団の国の王様という表現も好きだった。
しかし、吉行淳之介の他の作品は、おとなの世界の話で、買ってみたものの、あれ?と思うことばかり。でも文章からの感覚的なことが好きで社会人になっても続いた。そして、川端康成も吉行淳之介の影響で、読んでみたいと思い、読むようになった。
大学の時、好きな人から、好きな作家を聞かれ、吉行淳之介と答えられず、風貌と字面が似ている、芥川龍之介と答えてしまった。もしあの時、吉行淳之介と答えていたら、彼はどんな反応だっただろうと時々思う。
