むかぁし西法寺ぃおらした”こうずう”さまん、長崎県のしじゃらしたけん、わが家(エ)んにきん寺へ来てくれぇて頼まれて、そっちさんはってかしたそうですたい。
いぃ時してから、西法寺ん御院主様ぇ長(ナ)んか手紙んきたそうですたい。
えらい下手糞ん字ぃで、終わりん方に
「御礼のしるしに、ブドウ酒二本お送りいたしますので、御笑納下さいますようお願い申し上げます。」て書ぇてあったそうですたい。
御院主さまん、えっと気の利いてもおらんじゃったとん、ブドウ酒ども送るて、感心なもんなぁて思うて、毎日(メェニチ)待っとなんしたばって、いつまでたってん送って来んそうですたい。
一年ばかりしてから、ひょっくり遊びげぇ来らいたけん、小僧(コウズウ)さめぇ、御院主様の聞いてみらしたそうですたい。
「こん前手紙貰うたとに、ブドウ酒二本送るって書いてあったとん、とうとう着かんじゃったが、送ってくれたとねぇ」て言いなしたりゃ、小僧さまん、きょとんとして
「ブドウ酒・・・て何の事で御座いましょうか」て言わすけん、御院主さまん
「ほら、あんたが向うからくれた手紙ん中に、ブドウ酒二本お送りいたしますて書いてあったけん、送ってくれて、局か何かの間違いで着かんとじゃないかと思うてね」て言いなしたりゃ
小僧さまん
「あの手紙には、そんな事の書いて御座いましたですか、よく覚えておりません。実は向うのお寺にあった『手紙の本』の中に御礼状の書き方というのが御座いましたので、その中の一つをそのまま書きましたので御座います」て言うて、
「しかし、ブドウ酒のことが書いてあったのには気がつきませんでした。相済みませんで御座いました」てことわけ言わしたそうですたい。