さよなら火星 | *** My Dearests ***

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一緒に暮らしているたくさんの動物達と
身近にあるお花や自然をお届けします♪

下手ですがアコギで動物達と一緒に
歌うのが好きです♪

 

7月の終わりから夏の間ずっと

夜の帰り道

 

地球に大接近していた真っ赤な火星が

ちまチャリ自転車のおともをしてくれました。

 

 

田んぼの間の直線をひたすらこぎ続けるとき

 

駅に向かう夜汽車が銀河鉄道のように光の筋を走らせ

その上空に大きく赤く光る星が

南東の空から南の空へ少しずつ移動していました。

 

ここは街灯も途切れ途切れ

人通りもほとんどなくて

いつもは必死にちまチャリをこぐところなのですが

 

この夏にかぎっては

明るく光る赤星と夜空を貫く夜汽車の光

 

そしてガタゴト線路を伝わる懐かしい響きと

蛙の大合唱が創り出す不思議な世界の中で

 

のんびりのんびりいつまでも

このときを終わらせたくない衝動に駆られていたのでした。

 

 

 

 

 

 

火星の写真は

残念ながらカメラに赤い点が写っただけでしたが

 

同じように赤く丸いものが

夏のお庭に姿を現しました。

 

 

 

 

鉢植えのねむの木が

久しぶりに花を咲かせたのです。

 

 

 

 

 

おゆきはある日

涼しくなった夕方のお庭でねむの木にお願いをしました。

 

君が夜もこうしていてくれたら

このお庭で暮らす小さな生き物たちも

闇に光る大きな赤星に出会えるでしょう。

 

どうかこのまま咲いていてください。

 

 

 

 

 

でもそれは

叶わぬ願いだとわかりました。

 

おゆきがいい気分になると

おねむになるのと同じなのです。

 

 

 

 

 

もちろん、いつでもどこでも

すぐにおねむになってしまうおゆきとは違って

 

ねむの木の持つ時計は

とてもしっかりできていますけれど 腕時計

 

ねむの木は日が沈むと一斉に葉を閉じて

昼間大きく開いていた真っ赤な花も

夜露を含むとホウキ星みたいにしゅっとしてしまうのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

およそ1か月後

ちまチャリ通勤帰り道。

 

火星は再び地球から離れ小さくなって

見える時間も次第にずれてゆきました。

 

次に大接近した火星と伴走できるのは

17年後なんですって。

 

そのころまで自転車に乗っていられるかしら自転車!?

 

 

 

 

 

 

一昨日は中秋の名月で

 

火星は姿を消しても

まあるいお月様が帰り道を煌々と照らしてくれていました。

 

お月様のビューポイントは田んぼの間ではないんです。

 

橋の欄干にちまチャリをとめて

川の水面に写るお月様を平安の世のひとのように眺めるんです。

 

風流でしょう。

 

 

 

 

 

 

 

こうして秋が深まり

お月様を鑑賞する頃になると

 

ねむの木に咲いた赤い花はみんな盛りを超えて

おゆきのお散歩道は彼岸花でいっぱいになります。

 

 

夕方、真っ赤な花の間を歩くと

 

火星とともに走り抜けた夏の夜のこと

そして星のように消えていった仲間たちのことを

思い出しました。

 

 

 

 

 

星には星の

人には人の

動物には動物の

花には花の

それぞれのライフスパンがあって

それぞれが異なる時計を持っています。

 

そんな者同士がこうして同じ世界で出会い

一瞬でも同じ時を過ごすということは

どこかで決まっているのでしょうか。

 

会合周期を最小公倍数で計算して奇跡を掛けたら

答えは出るのでしょうか。

 

 

 

 

有るけど無くて

無いけど有るような

ふわふわとしたこの世界で

 

それぞれにとっての ほんとうの幸い って

どんなことなのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしは心を夕日に預けることにしました。

秋の夜長に深い眠りにつけるように。

 

星を見ていたら

夜通しそんなことを考えてしまいそうな気がしたのでした。

 

 

お月様

 

 

 

 

 

 

 

by  ゆき♀